グリーンブック / Green Book

グリーンブック / Green Book

『グリーンブック』とは、ユニバーサル・ピクチャーズ配給、ピーター・ファレリー監督による長編伝記コメディ映画。黒人差別が強い時期に、単独でディープサウスへの演奏旅行へ挑む天才黒人ピアニストと腕っぷしが強いイタリア系アメリカ人運転手が、ツアーの道程でさまざまな嫌がらせに遭遇し、当初はいがみ合いながらも一つ一つトラブルを切り抜け、最終公演までツアーを敢行する。その後2013年まで生涯続くことになる、厚い友情と信頼関係を築きあげるまでを描いた。8週間の実録ロードムービー。2018年制作・アメリカ作品。

shinecralisのレビュー・評価・感想

グリーンブック / Green Book
10

自分らしさとは?

アカデミー賞をとったということで期待して観たのですが、期待を裏切ることなくとてもいい映画でした。しかもこれが実際にあった出来事が元になっているというのも驚きです。
白人で粗暴な運転手と黒人でハイソな音楽家の、どう考えても交わりそうにない二人が演奏しながら各地を旅するストーリーで、もちろん初めは互いのことを良くは思っていません。特に白人の運転手は黒人への差別意識をいまだに強く持っているのでなおさらです。
しかし一緒に旅をしてみると、白人は黒人の音楽家がいかに理不尽な差別を受けているのか目の当たりにします。私も観ていて驚くようなシチュエーションがたくさんありました。
差別的な言葉で呼び掛けられるのは日常茶飯事だし、音楽を演奏しに来た晩餐会では、さっきまで彼の演奏にうっとりしていた人間が、黒人は外に建てられたボロボロの木の小屋でトイレをしろと、笑顔で、何の悪気もない様な顔で促すのです。
ある街では夜出歩いているだけで逮捕されます。ただ存在しているだけで牢屋にぶち込まれ、理不尽な暴力を受けます。白人はそれを見てだんだん考えが変わっていきます。
白人のほうも学がなく粗暴で、食べ方が汚く上品さに欠けるんですね。しかし仕事はきっちりやってくれるし腕っぷしも強いし、いいものはいい、おかしいことはおかしいとはっきり言うまっすぐさがありました。
肌の色や、今まで自分の身に起こったことがまるで違っていても、お互いに尊敬できる部分があれば友情は成立し、逆になんの遠慮もなくリラックスして付き合っていけるのだな、と改めて考えさせられる素晴らしい作品でした。無駄にドラマティックに作られていない淡々としたところも、リアリティがあってよかったです。