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明治初頭の東北庶民の暮らしぶりが学べる!
1878年(明治11年)、イギリスの女流冒険家イザベラ・バードは、横浜で通訳として雇った伊藤鶴吉と、陸路で蝦夷地を目指す前人未到の旅に出る。イザベラ・バードは実在する人物で、史実をベースに物語は進んでいく。
東北の西海岸ルートを行く旅がバードの視点から描かれており、日本人の話す言葉は全て記号のような理解不能な文字で表現されていたり、バードを好奇心から容赦ない視線で見る日本人たちの目が不気味で恐怖を感じたり、と私たちも海外旅行で感じるような異国でのあの独特な不安を、バードを通して感じることができる。
庶民の暮らしや文化が、物語に数多く描写されており、異国人のバードには理解しがたい習慣(例えば混浴)や、同じ日本に住む私たちでもギョッとするような知恵(石を股間に擦り付けて剃毛をする)などを知る民俗資料としても楽しめる。
明治初期の偉人を主人公にした作品は映画やドラマ、小説、漫画で目にすることは多いが、この「ふしぎの国のバード」はその頃の地方の庶民の暮らしぶり、都市によって生活水準にかなり差があること、さらにはそれを異国人からの視点を通してみることができる作品で、冒険漫画としても歴史漫画としても民俗資料としても何通りもの楽しみ方ができる。