カメラを止めるな! / カメ止め / One Cut of the Dead

カメラを止めるな! / カメ止め / One Cut of the Dead

『カメラを止めるな!』は2017年に製作された日本映画。略称は「カメ止め」。監督の上田慎一郎にとっては、初の劇場長編作品である。上映時間は96分。山奥の廃墟でゾンビ映画の撮影をしていた自主映画の撮影隊に、本物のゾンビが襲いかかる様子が描かれる。ストーリー前半と後半で作品のテイストが変わるということで話題となった。

abuabuのレビュー・評価・感想

カメラを止めるな! / カメ止め / One Cut of the Dead
10

口コミで上がりまくったハードルを軽々と飛び越える笑いと感動。

前フリが終わってからの種明かしパートが最高に面白いです。特に監督が嘘つきで調子の良いアイドルの女の子を、本番のどさくさに紛れてアドリブで罵るシーン。今まで監督を舐め切っていたアイドルが本気で怯えている様に意地悪ですが溜飲が下がりました。またその流れで「ちょっ、言い過ぎですよ」みたいな感じで止めに入った若手俳優にも、実は脚本にネチネチ文句を言われた恨みがあったので「オメーはリハの時からゴチャゴチャゴチャゴチャうるせぇんだよォ!」とブチ切れていました。裏側を知らなかった時は「うわぁ、怖い監督だな……。役者さん達は大変だな……」と同情したのですが、裏側を知ると、それまで散々役者陣に困らされていた監督の逆襲に、むしろ笑ってしまいます。他にもアル中気味の役者がお酒を飲んでダウンしたり、お腹の弱い役者が腹を下して脚本を無視して勝手に外に飛び出したり、トラブルに次ぐトラブルが制作陣を襲います。前フリ時の不自然な沈黙やカメラワーク、殺されたはずが突然立ち上がるメイクさんなどの様々な謎の裏に、まさかこんな苦労と涙ぐましい努力があったとは……と最終的に笑いが感動に変わります。また単にコメディとして面白いだけでなく、すっかり娘に尊敬されなくなっていた父親が、この困難な撮影に全力で取り組む中で作品作りへの情熱と親子の絆を取り戻して行くストーリー性が素晴らしかったです。