今敏監督のアニメ―ションはあまり知られていないのでぜひおすすめしたいです
アニメ映画監督今敏氏の手により、2003年に公開されたアニメーション映画です。
ホームレスの三人が赤ちゃんを拾うところから始まる本作は、今敏監督の代表作「パプリカ」に比べ、画面が非常に暗く地味です。パプリカが蜷川実花顔負けのファンタジックな夢の画面を数多く見せたのに対し、こちらは基本的に東京の下町が舞台で、しかもホームレスの三人の公園のねぐらなどでストーリーが進みます。また、パプリカの主人公は才能あふれる研究者であり、なおかつ美女だったのに対し、こちらはあまりお風呂に入れてないホームレスのおっちゃんとオネエと家出娘の三人なので基本的に華やかさはないといっても過言ではありません。しかしだからこそ、より身近さを感じることができ、登場人物もどこかで会ったことのあるような親しみを覚えます。また、彼らの周囲の人々もきわめて人間的であり、何らかの問題を抱えながら必死に生きています。三人が勝手なことばかりを言い争い、仲直りをし、それでも基本的に良心に従い少しずつ捨て子の親の情報へと近づいていく様は、自分や周囲の誰かに必ず重なります。映画開始30分後にはもう彼ら3人にたまらないくらいの愛着がわくはずです。
しかし何といってもこの映画の一番の推しはクライマックスのその一瞬です。静かで地味な光景がずっと続いてきたのはこのためだったのかもしれないと思わせるくらい、素朴でありふれて、しかし荘厳で美しい、救いと希望にあふれた本当に美しい一瞬を体験することができます。