あん(映画)

あん(映画)

『あん』とは、2015年5月に公開された、日本・フランス・ドイツの合作映画。原作は2013年2月に出版された、ドリアン助川による同名小説である。
どら焼き屋の雇われて店長として働いていた千太郎は、美味しいあんの作り方を知っている76歳の女性・吉井徳江を雇う。彼女のおかげで店は繁盛していくのだが、徳江がかつてハンセン病を患っていたという噂が流れたことをきっかけに客は減少。千太郎は徳江を辞めさせなければならなくなったのだが、どうしてもその後の徳江が気になり、彼女の足跡を辿っていく。監督・脚本は河瀨直美。樹木希林が主演を務めた。

hasizumiのレビュー・評価・感想

あん(映画)
10

生きるって辛い

不本意な不自由さを味わう人々の人生模様が「どら焼き」を通して描かれています。樹木希林さんが演じる徳江さんは、温かくてチャーミングな人でした。演技とは思えないほど自然で、人生を積み重ねてきた人間にしか出せない深みがありました。どら春を去る時のなんとも言えない表情が忘れられません。
徳江さんはいつも、食べ物や植物、風などに話しかけ、耳を澄ましています。様々な声が聞こえてくるそうです。気づかずに過ごしてしまっているけれど、気づかないほど当たり前になっている日々の生活の中に感動やメッセージがあるのかもしれないと感じました。「私たちはこの世を見るために、聞くために生まれてきた。だとすれば、何かになれなくても、私たちには生きる意味があるのよ。」これが、徳江さんがこれまでの壮絶な人生を経て、未来ある者たちに伝えようとした「生きる意味」なのです。
私も徳江さんを見習いたい。この世をよく見て、よく聞いて、生きる意味を全うしたいと思いました。カゴから放したカナリヤのように、ハンセン病患者が閉ざされた世界から解放され、差別なき世の中になることを心から祈ります。本当に見て良かったと思える作品に出会えて、幸せです。