悲しさの中に湧き上がるすがすがしい感動
どら焼き屋の雇われ店長、常連の女子中学生、どら焼き屋で働くことになった老女の三人の心の触れ合いとそれに伴う心境の変化が、美しい日本の四季の映像とともに描かれる。
過去の傷を引きずりながら、生きがいもなく淡々と毎日を過ごしていたどら焼きや「どら春」の雇われ店長千太郎は、懇願されて一緒に働くことになった老女・徳江との対話やその生き方に触れて、少しずつ人間らしさを取り戻していく。また、家には居場所のない女子中学生のワカナは、どら焼きやが安心できる場所になっているようで常連客になっているが、彼女もまた、徳江と触れ合うことで生きる希望をもらう。
徳江の作るあんこが美味しいと評判になり、どら焼き屋が繁盛してきた矢先に、徳江がハンセン病患者であるという噂によって客足は途絶えてしまう。徳江はどら焼き屋を辞めて去っていく。心無い噂で傷ついたんじゃないかと心配した千太郎とワカナは徳江を訪ねてハンセン病患者の集落のようになっている場所へ行くが、逆に励まされる。その後再度二人が訪れた時にはもう徳江は帰らぬ人になっていた。世間のハンセン病患者に対する冷たい視線は変わらないが、この二人の中には確かに患者に対するあたたかく強い想いが芽生えているのだった。