葬送のフリーレン / Frieren: Beyond Journey's End

『葬送のフリーレン』は、山田鐘人原作、アベツカサ作画の漫画作品。『週刊少年サンデー』にて、2020年より連載が開始されている。「マンガ大賞2021」大賞や「第25回手塚治虫文化賞」新生賞を獲得するなど、さまざまな賞を受賞している作品である。物語は、魔王を倒した勇者一行のその後を描いたファンタジー作品で、主人公は魔法使いでエルフのフリーレン。魔王を倒すための10年間の冒険が終わり、勇者パーティーは解散。1000年以上生きるエルフのフリーレンにとっては、短い時間であったが、50年後に再会した勇者ヒンメルは年老いており、寿命により亡くなる。ヒンメルの死をきっかけに、人を知ろうともしなかったことに気付いたフリーレンは、人を知るための新たな旅に出る。旅の道中で出会ったフェルンという少女を弟子として仲間に引き入れ、さまざまな出来事を乗り越えながら、フリーレンはなにを思うのか。ほのぼのとしたシーンから敵との戦闘シーンまであり、引き込まれる、人の死について考えられる作品となっている。

NAOKI3153のレビュー・評価・感想

葬送のフリーレン / Frieren: Beyond Journey's End
9

「葬送のフリーレン」 - 英雄譚の"その後"を紡ぐ、心揺さぶるファンタジー傑作

「葬送のフリーレン」は、山田鐘人原作、アベツカサ作画による日本のファンタジー漫画作品だ。
2020年から『週刊少年サンデー』で連載が開始され、2023年にはアニメ化も果たした注目作である。

物語は、魔王討伐後の世界を舞台に展開する。
主人公のフリーレンは、魔王討伐パーティーの一員だった魔法使い。彼女は千年以上の寿命を持つエルフであり、人間の仲間たちが老いていく中で、自身は若さを保ち続ける。

仲間たちとの別れを経験したフリーレンは、人間の生き方や感情を理解するため、新たな旅に出る。
本作の最大の魅力は、「英雄譚の後日譚」という斬新な設定にある。

多くのファンタジー作品が魔王討伐までを描くのに対し、本作はその後の世界と登場人物たちの人生に焦点を当てる。
この視点の転換により、生と死、時間の流れ、人間関係の儚さといった深遠なテーマを掘り下げることに成功している。

キャラクターの描写も秀逸だ。フリーレンの感情の機微や成長が丁寧に描かれ、読者の共感を誘う。
また、新たに登場する仲間たちも個性豊かで魅力的だ。彼らとフリーレンとの交流を通じて、人間の生き方や価値観の多様性が浮き彫りになる。

作画は繊細かつ美しく、ファンタジー世界の景色や魔法の描写が読者を物語世界に引き込む。
特に、時の流れを表現するシーンは秀逸で、一コマ一コマに込められた情感が読者の心を打つ。

「葬送のフリーレン」は、ファンタジーの枠を超えた人間ドラマとしても秀逸な作品だ。生と死、時間の価値、人との繋がりについて深く考えさせられる一方で、冒険や魔法バトルなどのエンターテインメント性も十分に備えている。ファンタジーファンはもちろん、人間ドラマや哲学的な物語を好む読者にもおすすめできる、現代ファンタジー漫画の最高峰と言える作品である。