葬送のフリーレン / Frieren: Beyond Journey's End

『葬送のフリーレン』は、山田鐘人原作、アベツカサ作画の漫画作品。『週刊少年サンデー』にて、2020年より連載が開始されている。「マンガ大賞2021」大賞や「第25回手塚治虫文化賞」新生賞を獲得するなど、さまざまな賞を受賞している作品である。物語は、魔王を倒した勇者一行のその後を描いたファンタジー作品で、主人公は魔法使いでエルフのフリーレン。魔王を倒すための10年間の冒険が終わり、勇者パーティーは解散。1000年以上生きるエルフのフリーレンにとっては、短い時間であったが、50年後に再会した勇者ヒンメルは年老いており、寿命により亡くなる。ヒンメルの死をきっかけに、人を知ろうともしなかったことに気付いたフリーレンは、人を知るための新たな旅に出る。旅の道中で出会ったフェルンという少女を弟子として仲間に引き入れ、さまざまな出来事を乗り越えながら、フリーレンはなにを思うのか。ほのぼのとしたシーンから敵との戦闘シーンまであり、引き込まれる、人の死について考えられる作品となっている。

mimimaru_666のレビュー・評価・感想

葬送のフリーレン / Frieren: Beyond Journey's End
9

1000年以上生きるエルフの魔法使い・フリーレン

この物語は「魔王を倒す勇者」の話ではない。「魔王を倒した勇者の死後」の話だ。

1000年以上生きる、エルフの魔法使い・フリーレンは勇者一行として、旅に同行する。そして、勇者と共に魔王を倒し、国をあげて賞賛され、勇者や仲間は老いて死んでいく。

エルフのフリーレンは時間感覚が人とは違う。人はすぐ死ぬ、と自分と関わった人について、彼女なりの思いを心に秘めている。すぐ死ぬ、だけれども。だからこそ。

フリーレンは旅をする。様々な人と出会い、分かれ、各地で出会うかつての「勇者たち」との思い出に、新しい「仲間たち」との日常に、これからに、心が動く。

フリーレンの世界はとても静かで平穏だ。凪のような時間が過ぎていく。スポーツ漫画などでよくある「熱血」とは真逆の、「平熱」「涼しさ」を感じる。それはフリーレンの心に空いた穴ではなく、ささやかな幸せや、ささやかな寂しさや、ささやかな喜びのように私は思う。

もしあなたが千年生きるとして、周りの人が先にどんどんいなくなってしまうとしたら、生きる意味を何に定めるだろう?

彼女は何を思い、生きていくのか。
それは、悲しみなのか、さみしさなのか、喜びなのか。

フリーレンの旅は続く。