音楽も含めて傑作
2013年に公開された宮崎駿作品で、堀辰雄という文豪の同名作品がモチーフになっています。しかし、この作品をそのまま映画化したものではないため、堀辰雄作品を何度も読んでいる人でも新鮮な気持ちで観られます。
もともとは「引退作」として宮崎氏が制作していた作品だけに、かなりの本気度が感じられます。とにかく絵がキャッチーで、完全に成熟した宮崎駿の作画能力の素晴らしさを感じられ、動くアートとしても楽しめます。2010年代に入ってフルCGアニメ映画ばかりを視聴している人には、新鮮に感じられるのではないでしょうか。
個人的に作品のクオリティーに貢献していると思うのは声優と音楽。主人公の声を宮崎駿の元部下・庵野秀明氏が担当していますが、プロの声優ではないためリアリティーがあり、個人的には気に入っています。一方でヒロインの声を演じるのは瀧本美織さん。素人の庵野氏とは対照的に一流女優です。メインの2人が両方とも素人声優だったら問題かもしれないですが、片方が素人・もう片方はプロという事でうまくバランスがとれていると思います。
『魔女の宅急便』同様に鈴木プロデューサーのアイデアでユーミンが主題歌を担当していますが、感動的なラストシーンと「ひこうき雲」は見事にマッチしていて、何度視聴していてもエンディングテーマのイントロが流れ出すと感涙してしまいます。