黒いback numberの良さ
2013年頃、私が中学生の時に母親がたまたまback numberを車で流していた事がありました。叙情的なメロディラインと、良い意味でバンドらしくない曲調とフレーズ、繰り返すギターリフ。それが「春を歌にして」という曲であるというのは、しばらく後になってから知りました。
ある日ニコニコ動画などで曲を漁っていると「思い出せなくなるその日まで」「幸せ」「スーパースターになったら」「はなびら」「ミスターパーフェクト」が単体で聴けるようになっており、新しい曲が出てくるのを待っては気に入ったものを延々リピートしていました。
back numberの何がすごいのかを語ると、ベースコーラスの安定感が圧倒的。基本的にメロディの下を歌うコーラスなのですが、上を歌うコーラスよりはるかに難しい。しかしながらback numberのベースはこれを容易にやってのけています。しかもベースを弾きながら。
そしてback numberにおいて重要とも言えるのは、独特な目線の歌詞ではないでしょうか。「ミスターパーフェクト」などは特にその作詞の工夫が凄まじいです。曲が進んでいくごとに「人に愛されるように完璧な人間」になれるよう、目を潰し、口を縫って、耳を塞いで、悩んだら頭さえ必要無いと徐々に体の一部一部を無くしていき、最終的に気がついた時には自分がいなくなってしまう。アイデンティティの喪失について生々しく描写したこの曲が「ミスターパーフェクト」という名前がついているのも最高に皮肉が効いていると思います。
2024年になって、もはや知らない人はいないほど人気バンドとなったback numberですが、深く深く掘り下げた時に「高嶺の花子さん」や「ヒロイン」といった明るい曲とはまた一味違った彼らの黒い部分が癖になります。もちろん明るく失恋を歌った曲や「sister」など、CMに登用されるような人を鼓舞するような曲も素敵ですが、たまにアルバム曲で魅せるような疾走感あふれる鬱々とした曲などが、まさに昔の男のように後ろ髪を引いて、back numberという沼にハマらせるスパイスとなっているのではないでしょうか