ゴジラ-1.0 / Godzilla Minus One

ゴジラ-1.0 / Godzilla Minus One

『ゴジラ-1.0』(ゴジラマイナスワン)とは、世界的に有名な怪獣映画『ゴジラ』シリーズの生誕70周年を記念して制作された映画作品。監督は山崎貴、主演は神木隆之介で、「戦後、日本。無から負へ」とのキャッチコピーで話題となる。
太平洋戦争が集結して間もない東京。元特攻隊の敷島浩一は、仲間を見殺しにした罪悪感に慄きながらも懸命に生きていた。そんな折、東京に恐竜じみた巨大生物が出現。それが戦時中に見たゴジラという怪物だと気づいた敷島は、仇討ちのために、日本の未来のために、命懸けでこれを倒さんとする。

tw-47468553380のレビュー・評価・感想

ゴジラ-1.0 / Godzilla Minus One
10

主軸となるのは、やはり敷島の挫折と絶望からの再生の物語。戦後復興の日本と重なり、胸が熱くなる。

搭乗機の故障を訴え、特攻から逃げた主人公・敷島は、味方からその真意を見透かされ塞ぎ込む。
その晩敷島が見たのは、人間の希望や生への執着など紙くずのように蹴散らす、巨大な獣だった。
今までとは比べものにならない恐怖に、怖じ気づいて逃げ出す敷島。
味方はあえなく全滅し、生き残りの橘に再三なじられ責められながら、帰国を果たす。
しかし待っていたのは、がれきと化した実家に戦火に果てた家族……。
何もかもなくなった廃墟の中、心に癒えぬ傷を抱えながら生きる敷島。
しかし日々の糧を得る仕事や仲間、守るべき人々に恵まれ、徐々に平和な生活を取り戻す。
そんな敷島の前に、繰り返す悪夢が現実になったかのように、あの巨大な獣が忍び寄る。
敷島は悪夢を振り払い、愛する者を守り抜くことが出来るか――。

舞台は戦後まもなくの、人々が食うや食わずの生活を強いられている極貧の時代。ゴジラを倒す超兵器などあるはずも無く、人々は枯れ葉のような木造船や廃棄された兵器をかき集めて立ち向かいます。
相手は核兵器を彷彿とさせる熱線を吐き、一歩踏み出すだけで何十人を踏み殺すバケモノなのだから、苦戦は必至。それでも戦わねば、背後にいる愛する人々が踏みつけられ、焼き殺される。
太平洋戦争を生き延びた人々が、再び知恵を総動員、団結して決死の戦いに挑む。そのドラマに最後まで目が離せませんでした。

本作の見所は色々ありますが、私が作中で特に気に入ったのは、ゴジラの面構え。歴代のゴジラは、どこか人間など眼中にない王者の風格を醸し出していました。
しかし今回のゴジラの目つきには、人間への殺意と憎しみ、そして明確な攻撃の意思を感じるのです。
己を原爆によって焼いた人間という“種”そのものを憎悪している。映画館の席に座りながら、そう感じてゾッとしました。
逃げ惑う人々が容赦なく踏み潰される絶望感。吐き出す熱線の先に上がるキノコ雲。絶望の神の姿に痺れました。

幻の試作戦闘機“震電”や、有名な幸運の駆逐艦“雪風”、戦後まで生き残った戦艦“高雄”など。ミリタリーファンが喜びそうな兵器も登場します。
舞台設定から緊迫した展開まで、非常に良く出来た映画でした。イチオシです!