思わず泣いてしまうほどの兄妹の絆に、そして鬼と対峙し討ち払う勇気に刮目せよ!
とある炭焼小屋に生まれた竈門炭次郎が、幸せな日々の中で突然家族を失ってしまう。母も弟妹も、すべて──。
しかし、妹の禰豆子だけは生きていた。
鬼と化して──。
妹を鬼にし、家族を鬼に殺された炭次郎は鬼への復讐、そして禰豆子を必ず人間に戻すことを誓う。強い思いを胸に抱く炭次郎は、鬼殺隊の一員となるべく激しい修行に明け暮れるようになった。
肉体を酷使し、鋼の精神を鍛え、時に涙しながらも鬼への復讐を思い出し前を向く炭次郎。やがて厳格な鬼殺隊の試験に合格し、隊員となる。
だが入隊した先に待っていたのも、修行時代と変わらぬ厳しい現実。
鬼に大切な人を奪われた者を見て、奪った側の鬼を見て、くじけそうになりながらも強い心をもって炭次郎は鬼と戦い退治していく。鬼と化した禰豆子を背負って、共に戦い続ける。
そんな炭次郎にも鬼殺隊に入隊してから、仲間ができた。
臆病だが寝ている時はめっぽう強い我妻善逸、イノシシの仮面を被り雄叫びを上げながら戦う嘴平伊之助だ。
2人とも炭次郎とは息が合い、ともにいる時は和やかな雰囲気を漂わせている。
さて、鬼退治に話を戻すと、戦況は好ましくなかった。
下弦の鬼、上弦の鬼と鬼の中にも2通りあって、そのどちらも強いからだ。とても炭次郎や善逸、伊之助だけでは手に負えない。そこに登場するのが「柱」と呼ばれる10人の鬼殺しのプロ集団だ。
炭次郎たちが手を焼く下弦の鬼程度であれば、一刀両断できるほどに強い。物語の中盤からは柱たちとともに鬼退治に出かけ、また柱たちから稽古をつけてもらい、炭次郎はますます成長する。
そしてついに、炭次郎は鬼たちのトップに立つ鬼舞辻無惨と戦うことになった。
上弦の鬼をすべて倒し、無惨との戦いに挑む炭次郎。それまでに大勢の犠牲者を出し、味方陣営の戦力を減らしながらも、勇敢に立ち向かう。
無惨は強かった。柱の手足を吹き飛ばし、医師である珠世の毒を食らいながらも、尚生きている。攻撃を止めない。
こんな強い相手に本当に勝てるのか──?
周囲の空気がそんな思いに包まれる中、炭次郎は戦い抜き無惨を倒すことに成功するが、死に際の無惨によって今度は鬼にさせられてしまう。
鬼になり、正常な思考がままならず暴れ始めた炭次郎の元に駆け付けたのは、珠世の薬で人間に戻った禰豆子だった。兄に抱きつき、首筋を噛まれても抱きしめる力を緩めない。「お兄ちゃん!」と叫び続け、徐々に炭次郎から狂気を奪っていく。
やがて炭次郎はすっかり正気を取り戻し、無惨を倒したこと、禰豆子が人間に戻っていたことに涙する。
不屈の精神、鋼の肉体が禰豆子を救い、人々を鬼の脅威から遠ざけた。
鬼には人間時代の物語が、柱にも柱なりの生い立ちがある。この作品はそういう細かい描写まで楽しめる最高の作品だと言える。