ハッピーエンドではない良さ
まずはハッピーエンドでないところが、この映画の良さを最大限に引き出していると思います。
ジャズミュージシャンで自分の店を持つことを目標にしている男と、俳優になることを夢見てオーディションを受けまくっている女。出会いはお互い良い印象ではありませんでしたが、再会する機会があり、そこで親密になります。
それから、お互いの夢を応援しながら関係を築いていくのですが、順調にはいきませんでした。すれ違いが起こり、男の方が素直になれずに結局は離れてしまいました。
それぞれ相手に気持ちを残しているのに別れてしまった切なさ。「もっと素直に、もっと自分の気持ちに正直にならなきゃ!」と観ている方も切なくなってしまいました。
最後、偶然入ったお店が実は男のジャズのお店で念願を果たしたことを知る女と、彼女に気づくが声をかけるでもなくピアノを弾く男。演奏が終わりお店を出ていく女が振り返ると男が微笑みかけてうなずくシーンは、音楽と相まってじんと胸に来るものがあり、思わず涙ぐんでしまいました。とても切ないのですが、それでいてとても前向きな気持ちにもなる、そんなシーンでした。
この映画はミュージカルでもあるので、至るところに歌あり、踊りありです。特にオープニングはのちのグラミー賞の前振りでもパロディにされるぐらいに有名で、いきなり「ミュージカルの楽しさが全開!」といった印象でした。また、雰囲気に合った曲が多く、観ている観客の気持ちを盛り上げてくれます。
自分は「ミュージカルはいきなり歌いだしたり踊りだしたりで、ちょっと…」と敬遠していたところがありましたが、そんなネガティブさを吹き飛ばす、グッとくる良い映画でした。