マリー・アントワネット

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マリー・アントワネット
8

ファッションを楽しむための映画『マリー・アントワネット』

ソフィア・コッポラ監督の映画『マリー・アントワネット』。歴史物の映画としては、正直あまり評判はよろしくない。だが、この映画の最大の魅力は、まるでファッションショーを見ているかのような、数多くの素晴らしい衣装が登場することである。
まず、冒頭からルイ16世との結婚前後までのマリーの衣装は、華やかな中にも瑞々しい色合いや華奢な装飾などが使われ、どこか愛らしい「少女らしさ」が残るものとなっている。
それが宮廷生活にも慣れ、夫婦生活がうまくいかないことへのストレスから浪費に走り出すと、マリーのファッションはどんどん豪華で大胆、ありえないような高さのヘアスタイルなどに変化し、「少女らしさ」を失ってゆく。だが、そんなときでもマリーの衣装には目を奪われてしまう。過剰な飾りの帽子も、フリルだらけのドレスも、どれも現代に生きる私たちにとっては派手すぎるはずなのに、「萌える」ほど美しく洗練されているのだ。
ようやく子宝に恵まれたマリーは、一転して自然を愛する女性になる。田舎風の別邸に住み着き、そこで緑豊かな自然の中、今までの派手なドレスを脱ぎ捨て、白一色のシンプルなドレスに着替えるのだ。この自然の中に佇むマリーと、そのドレスの美しさは圧巻。ファッションからも幸福感が溢れている。
しかし、ご存じのとおり、幸せな時は長く続かない。フランス革命だ。夫であるルイ16世と共に、暴徒と化した民衆が迫りくる宮殿で、毅然と王妃として振る舞うマリーの衣装は、シンプルなドレスから格調高いドレスへと変わっている。覚悟を決めた王妃としてのドレスだ。
こうして、ファッションを通じて『マリー・アントワネット』という1人の女性の生涯を描いた本作は、圧巻のファッションショームービーとも言えるかもしれない。実際に、本作は第79回アカデミー賞の「衣装デザイン賞」を受賞している。ファッション好きの方であれば、歴史物だと思って肩肘を張らず、ただファッションを楽しむための映画として鑑賞するのもオススメだ。
最後に、もしこの作品をご覧になる際には、劇中ほんの一瞬だけ見える某有名スニーカーを探してみるのも楽しいだろう。豪奢なシューズの中に、なぜかあの星マークのスニーカーが溶け込んでいるのだ。見つけるとくすっとしてしまう、可愛らしい遊び心に溢れている。