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映画化もされた『残穢』をこの度読んでみました。
『十二国記』や『屍鬼』の作者である小野不由美さんの著書で、ドキュメンタリー・ホラーとやや珍しいジャンルの小説です。
完全一人称で「私」の視点で物語は進んでいきます。作家の「私」がホラー小説を書いていたおりに、ホラー体験を本の最後に募集したことがすべてのはじまりです。
読者の久保さんから「家に自分以外は誰もいないのに、誰かがいる気がする」という手紙が送られてきました。覚えのある内容だと思った「私」が以前に届いたホラー体験の手紙を漁り、久保さんと同じマンション内の人からの体験談が合致しました。それを切っ掛けに久保さんの住むマンションに昔事件がなかったか、長い時間をかけて探っていきます。
主役である「私」は霊感がなく、合理的な女性です。家の中の異音ではないか、冷静に対処をしていきます。
最初はマンション周辺、数年前単位のことを探っていったのが徐々に地域は広がり、年数は昔に遡っていきます。心霊現象の発端は一体どこから来るのか。建物ではなく土地そのものなのか。
全編に至って「私」の見方は現実的です。それが逆に身近にあるホラーと繋がり、読み応えが増します。
途中で「私」は病気を患います。これが心霊に祟られたと解釈するか、作中にあったとおり最終的判断はそれぞれの「世界観」に委ねられます。
その他の事件も心霊の仕業であったのか、読み手の感性に任せるといった手法が整えられてます。
身近にある恐怖という点で、主点である「私」が冷静な分だけ恐ろしさが増すので、リアリティのあるホラーをお求めの方にオススメです。