老若男女誰もが楽しめる、全方位型SF作品(仮)
異世界からの侵略者である近界民(ネイバー)と、それと戦う若者たちのSF物語……というのが端的な物語の説明になるのだが、本作の最大の魅力は「ジャンルが定義できないこと」にあると思う。というのも、確かに大まかなジャンルで言えばSF作品ではあるのだが、その中にさらにバトルアクションがあり、時に苦悩を伴う人間ドラマがあり、かと思えば会議室で謀略知略が繰り広げられ、戦闘ひとつとってもフィジカルで戦うだけでなく武器や道具に工夫を凝らしカスタマイズを重ね…などなど、語りつくせないほど細分化された「魅力となり得る要素」がそこかしこに詰まっており、それらひとつを取り上げてみてもそれぞれに背景と世界観ががっちりと組まれ、ボリュームが尽きないのが特徴だからだ。
それゆえに、読者や視聴者はSFとして本作を楽しむことも、人間の成長物語として本作を楽しむこともでき、楽しみ方はまさに無限大の可能性がある。これはもう、老若男女、全方位のファンを魅了する作品として確立された作品であるとも言えるだろう。
また、敵味方含め、多数のキャラクターが目まぐるしく登場するのも本作の特徴のひとつだが、それぞれのキャラに個性や意志、キャラクターごとの信念や思考がしっかりと描かれており、いわゆる「捨てキャラ」がいないのも大きな魅力のひとつとなっている。主人公の遊真や修を始め、彼らを取り巻く同年代のライバルや仲間たちに、それを見守ったり時には障壁になったりする大人たち(この大人たちがまたなんとも憎めなくて良いのだ)、果てには敵陣営の一人をとっても誰もキャラ被りをしていないどころか、それぞれが「この世界に感情を持って生きている」感をありありと感じられるため、作品を読み進めながら自分にぴったりの「推し」を見つけるのもお楽しみ要素であると言えよう。