天国大魔境 / Heavenly Delusion

天国大魔境 / Heavenly Delusion

『天国大魔境』(てんごくだいまきょう)とは、文明が崩壊した後の世界を生き抜く少年少女たちが世界の謎を解き明かしていく様を描いた、石黒正数による漫画作品。2019年には高名な漫画賞である「この漫画がすごい!」でオトコ編第1位に輝いている。
未曽有の大災害で人類文明が崩壊して15年。外界から閉ざされた施設で暮らすトキオは、「外の世界に行きたいか」とのメッセージを受け取り戸惑う。異形の怪物が徘徊する外の世界では、キルコという少女がトキオと同じ顔をしたマルと共に“天国”目指して旅を続けていた。

YUKIKAZEのレビュー・評価・感想

天国大魔境 / Heavenly Delusion
8

考察が好きな人にはたまらない

清潔で穏やかな、近未来感のある環境に暮らす子供たちが通う「学校」。荒廃し、秩序が失われた日本を旅をする少年たち。2つの世界が振り子のように描かれた作品。
ストーリーが進むにつれ、真相がパズルのピースのようにわかっていくことがとても気持ちがいい。伏線回収や、考察が好きな人にはかなりおすすめできる。
世界観も細かいところまで作りこんであって、とても良く練られていることがわかる。例えば「災害」後に生まれた子供たちの教養のなさなどだ。箸の持ち方や倫理観の欠如などを気にしている場合ではなく、とにかく必死で生きていることが話の随所に見受けられる。
この漫画を支えているのは、世界観を正確に伝えられる圧倒的な画力だと思う。登場人物の描き分けが恐ろしいほど巧く、奇抜な髪形や服装をしていなくても「あ、このキャラはあのシーンの!」と説明がなくても気が付くことができる。
シリアスとギャグのバランスもちょうどいい。グロテスクなシーンや性的なシーンが独特で、静かなのに狂気を感じる。一方、ギャグシーンの力の抜け方がテンポよく、前作の「それ町」の空気もあってホッとする。
ミステリー小説を解読するような気分になる漫画。いつもならすぐに考察系のブログや動画を見てしまう私も、本作は手を出さずに答え合わせを楽しんでいる。ただし前述のように際どいシーンもあるため対象年齢は高めだと思われる。