考察が好きな人にはたまらない
清潔で穏やかな、近未来感のある環境に暮らす子供たちが通う「学校」。荒廃し、秩序が失われた日本を旅をする少年たち。2つの世界が振り子のように描かれた作品。
ストーリーが進むにつれ、真相がパズルのピースのようにわかっていくことがとても気持ちがいい。伏線回収や、考察が好きな人にはかなりおすすめできる。
世界観も細かいところまで作りこんであって、とても良く練られていることがわかる。例えば「災害」後に生まれた子供たちの教養のなさなどだ。箸の持ち方や倫理観の欠如などを気にしている場合ではなく、とにかく必死で生きていることが話の随所に見受けられる。
この漫画を支えているのは、世界観を正確に伝えられる圧倒的な画力だと思う。登場人物の描き分けが恐ろしいほど巧く、奇抜な髪形や服装をしていなくても「あ、このキャラはあのシーンの!」と説明がなくても気が付くことができる。
シリアスとギャグのバランスもちょうどいい。グロテスクなシーンや性的なシーンが独特で、静かなのに狂気を感じる。一方、ギャグシーンの力の抜け方がテンポよく、前作の「それ町」の空気もあってホッとする。
ミステリー小説を解読するような気分になる漫画。いつもならすぐに考察系のブログや動画を見てしまう私も、本作は手を出さずに答え合わせを楽しんでいる。ただし前述のように際どいシーンもあるため対象年齢は高めだと思われる。