世の恋愛不器用たちの代弁者
群馬県出身の3ピースロックバンドであるback number。2011年にメジャーデビューを果たすと、耳に残るキャッチーなメロディーラインと爽やかな歌声で急速にファンを増やしていった。このバンドの特徴と言えるのが、清水依与吏(Vo/G)が手がける歌詞だ。彼の歌詞の多くが男女の恋模様を描いているが、それぞれの曲に登場する主人公は決まって不器用であり、本音を口に出す勇気もなく、いつも片隅から意中の相手を眺めているような人物である。そのもどかしさと未練や後悔の気持ちを繊細な言葉や視点で表現することで多くのリスナーの共感を得ている。
また、日本のヒットソングを振り返っても、切ない歌詞は切なげなメロディーに乗せられて歌われることが多いが、彼らの場合は切ない歌詞であっても軽快かつ明るいメロディーに乗せてしまう。それでも不思議と楽曲を聴いていて歌詞とメロディーがマッチしていないなどの違和感を抱くことはない。清水の稀有なメロディーセンスと高い歌唱力によって、その異端さを心地良さに変えてしまっているとさえ感じる。むしろ、そのような作風が彼らの武器となっているのは間違いないだろう。
それから、アップテンポな曲だけでなく、もちろん切ない歌詞を切なく聴かせることもできる。曲によってはしっかり涙を誘うことができるところも大きな魅力である。1つ気になることとしては、メジャーデビューから時間が経つが、発表した楽曲のほとんどが恋愛をテーマにしており、若干マンネリ化している印象も受ける点。歌詞の幅を広げ、新たな一面を見せることができれば、さらに躍進していくのではないかと感じる。