天使なんかじゃない / 天ない

天使なんかじゃない / 天ない

『天使なんかじゃない』とは、矢沢あいによる漫画作品。少女漫画雑誌『りぼん』1991年9月号から1994年11号まで連載された。全8巻の単行本に加え、完全版コミックス全4巻、文庫本全6巻、さらに全8巻の小説が刊行されている。1994年にはOVA化された。創立されたばかりの私立聖(ひじり)学園の生徒会を舞台に、主人公冴島翠を中心とした生徒会の面々が繰り広げる、高校生の恋と友情を描いた青春群像劇である。ベテラン漫画家として知られる矢沢あいの出世作であり、その完成度から芸能人のファンも多い。

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天使なんかじゃない / 天ない
10

溢れる情緒!心を培う名作漫画

漫画『天使なんかじゃない』は、主人公の翠の恋模様を描いた恋愛漫画です。翠が恋した相手・晃は過去の出来事で心に傷を負ったまま。初めは二人の気持ちがすれ違うものの、距離が縮まり恋仲になっていく過程が作品の見所で、翠はいじらしく、分りにくいが態度で愛情を示す晃の姿にキュンとします。
素直に生きられない晃と翠は恋仲になるものの、嬉しい事ばかりではありません。翠が尊敬する美術教師の牧先生と晃の過去を知り、仕方ないという気持ちと晃を疑う気持ちの間で苦しむようになります。さらに海外に晃と血の繫がりのある恋人がおり、先生が苦しい恋愛をしていることも知ってしまう。晃が牧先生の恋人を探すために失踪してしまい、晃の母親が後悔する場面もありますが、離れた事により晃も翠も互いの大切さを再確認することになります。
翠の恋模様を軸に、登場人物達の恋愛や友情等の描写も丁寧に描かれているところも注目して欲しいところ。最初は笑わなかったマミリンが翠と出会い、明るくなっていくところや、二人の友情が育まれていく過程、マミリンの長きに渡る片想いの行方も見所です。
また、携帯電話の無い時代なので、直ぐに連絡がつかないじれったさも、物語の切なさに拍車をかけています。嫉妬心や、嬉しい、悲しい、苦しい、寂しい、自己嫌悪感等々、人間の持っている感情が、丁寧かつ、読者に伝わり易く描かれており、夫婦の愛情や友情といったものに、心揺さぶられるはず。この作品は恋愛漫画を超越したヒューマン物語なのです。
登場人物一人とっても、「その気持ち分かる」と共感できる部分が多く、人の感情や情緒があまりにも上手く描かれているので、漫画の中に引き込まれます。感動する場面が多々あり、涙無しでは読めません。泣けるだけでなく、心温まる作品だし、この漫画から教わる事も多いでしょう。
また、主人公や登場人物が見せる「その時を懸命に生き、未来への不安と葛藤しながら過ごす姿」は誰もが通る道であり、感情移入して読むことができます。
個性豊かな登場人物達と、溢れ出す情緒が魅力のこの漫画は、私のバイブル本と言って過言ではありません。この漫画を知らないのは損です!読むと一層、感受性豊かになりますよ。