人間失格 太宰治と3人の女たち

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人間失格 太宰治と3人の女たち
8

太宰治の人生とは

面白かった。普通に面白かった。

太宰治ということで文学のイメージから真面目で重めの作品なのかな、という先入観があったけど、監督が蜷川実花さんということで払拭されました。
とにかく監督らしい映像美でした。とにかく綺麗。
本当にこの監督の色彩感覚はすごいなぁと思う。
いつものように室内の家具の色の掛け合わせも目を引いたけど、今作は特に花や空や水といった自然の色のコントラストが格別に綺麗でした。地味な昭和初期の日本の街並みだから鮮やかな色が映える映える。

ストーリーも私は文学には無知なので、名前だけ知っている歴史的な作家がどんな半生を送ったのか知ることができて単純に興味深かった。勉強になった。
あるがままのストーリーラインなのでそれについては期待外れとかないと思う。
あとは脚本、役者さんの演技、演出が肌に合うかどうかだけなのかな、と。

ひとつだけ引っかかったのが、太宰治を演じた小栗さんの左利き(とのその文字)をそのまま演技に生かしたことくらい。
映画に入り込んで集中して見ていた終盤だからこそ、その違和感にハッと目が覚めてちょっと残念でした。
とはいえ、蜷川実花監督で主題歌にスカパラ×千葉さんの曲を使っているあたりですでに純正統派な描き方をするわけがないので、そのへんはありなんでしょうね。実在の人物を描いているだけに、どういう結末に至ったかは誰もが知っている。
それでも製作陣に、主演の小栗旬に最敬礼したいのは、小説『人間失格』を映画化したのではないから。そして、生に執着した太宰という新たな着眼点を、違和感など吹き飛ばすほどの説得力で演じ切ってみせたから。小栗をはじめ宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみがしていった肉付けが素晴らしかった。映画賞で無冠だったが、しっかり評価されるべき作品である。
二階堂ふみは、最後の女としての狂気を熱演していた。