音楽業界に旋風を巻き起こして2年、彼らが目指すものはなにか。
「小説を音楽に」をテーマとして、次々とヒット曲を連発するYOASOBI。
今や常識となりつつあるボカロ(ボーカロイド)曲を生身の人間が歌い上げるスタイルを確固たるものにしたアーティストと言っても過言ではないだろう。卓越した作曲センスのAyaseと、Ayaseが作曲した「ボカロ曲」を見事に歌い上げるikura(幾田 りら)。この2人が生み出す楽曲はどれも、メッセージ性が強く心に重く響く曲ばかり。それでいて軽快なリズムで次々と聴き手に襲い掛かるメロディーの中毒性が、数多くのファンをとりこにしている所以だろう。
彼らがなぜ、ここまでの楽曲を次々と生み出せるのか。それはまさしく、YOASOBIを構成している人間全員が、並外れた努力と才能の塊だからであろう。さきほどAyaseが作曲した曲を「ボカロ曲」とあえて表現したのは、YOASOBIの楽曲はもれなく「人間用」の楽曲ではないからだ。生身の人間が表現できる域を超えてしまった曲を、ikuraはその小さな身体で表現してしまうのだ。しかも一人で。またボカロ曲の難しさはメロディを織りなす楽器にもある。ボカロ曲はPCの作曲ソフトで作成するため、使える楽器は「無限」だ。しかも音階にも制限がない。しかしそのメロディを現場で奏でるのはPCではなく、これもまた生身の人間なのだ。ベース担当の「やまもとひかる」、キーボード担当の「ミソハギザクロ」、ギター担当の「AssH」、ドラム担当の「仄雲」、彼らバンドメンバーの努力と才能が、YOASOBIの楽曲に重みと温もりを与えている。
そんなYOASOBIは2021年12月に初の有観客ライブを成功させている。そのライブはファンにとって、まさしく待ち望んだ瞬間であり至高のひと時だったに違いない。しかしファンは、その先を求めている。YOASOBIもまた、この先を考えている。
「小説」というジャンルの才能が「音楽」という違うジャンルの才能と組み合わさることで爆発する化学反応を、これからも期待せずにはいられない。これからのYOASOBIの活動に、また彼らが生み出す楽曲に、引き続き注目していきたいものだ。