厳しくも生きる希望を添えてくれる伝記映画
冷戦期に実在した黒人ピアニストのドン・シャーリーと、ある日期間限定の専属ドライバーとして雇われたトニー・バレロンガの軌跡を描いたアメリカの伝記映画。
貧富の差や人種、育った環境など何もかもが異なる二人が衝突しつつ、旅路の中で友情を深めていく物語です。
タイトルにあるグリーンブックとは、黒人のみが利用できる施設のガイドブックのことを指しています。
過去のアメリカの一部地方では、黒人による公共施設の利用を禁止制限する法律が成立しており、それを疑問に思わない人々がそこで暮らしていました。
ドン・シャーリーのピアノを聴きに来る人々は彼を褒め称えながらも、シャーリーが食事を同席することも用を足すことも認められないような社会。
そしてバレロンガもまた、白人でありながら非アメリカ人という理由で謂れのない侮辱や悪意を受けてしまいます。
現代では想像もできない過酷な世界がそこにあり、かつてのアメリカに根付いていた人種差別問題だけではなく、人間を隔てる壁について厳しいながらも真摯に向き合ってます。
旅路の中でシャーリーとバレロンガがお互いを認め合いながらアイデンティティを築いていく二人の友情は、忘れられないものになるでしょう。