狂気な面はその人物の一面にすぎない
「噛みつき魔」と呼ばれる連続殺人犯を元敏腕FBI捜査官が追うサイコサスペンス映画。
レクター博士シリーズの中ではグロテスク要素は抑えめなので、比較的ストーリーに集中できました。
ずっと気になっていたレクター博士が捕まった経緯がさらっと冒頭シーンになっていて贅沢な作品だなと思います。
レクター博士の一言一言が深く無駄のない言葉選びが心に刺さります。
ハンニバルで狂気的な一面ばかり目が行きがちですが、本当に恐ろしいのは常人には理解できないほど知的過ぎることなのではないかと思います。
今回の事件解決のために動いている元FBI捜査官ウィル・グレアムを大きく助け、そして陥れる役回りです。
グレアム捜査官はレクター博士を逮捕した人物で、犯人の心を読むことが出来るプロフェッショナルでした。
正常な精神を保ちつつ犯人の精神に近づくというのは、考えてみると常軌を逸していることで自身も悩んでその才能を嫌っていたのが印象的でした。
引退後は家族と穏やかに暮らしていましたが、心のどこかで事件を求めていた感じが見受けられ隠している狂気的な探究心がレクター博士に気に入られた理由なのだろうと思いました。
この映画が印象的に思えた一番の理由は、犯人フランシス・ダラハイドのストーリーにとても重きをおいていたからです。
同時進行でストーリーは進み、ダラハイドの心の移り変わりがとても分かりやすく描かれていて同情を誘います。
人を殺すことに罪の意識を感じないほど純粋ともいえる狂気の背景には、悲しい理由がありました。
どんなサイコな犯人でも寂しいという感情も、人を愛したいという感情もあり、その愛情が不足することで心に異常をきたすのだと考えさせられる作品です。
どのように犯人を追い詰めるかも面白いですが、キャラクターそれぞれの心境をみて頂けるとよりこの作品を楽しめます。