日本という国を守るドラゴンと乙女たちの物語
航空自衛隊岐阜基地、通称「各務原(各務原)」に、こんもりとした山をくりぬいたような格納庫があります。そこにいるのは一匹のドラゴン、その名を『まそたん』。
主人公はそのまそたんを操縦して空を飛ぶ通称Dパイ(ドラゴンパイロット)の「ひそね」という若い女性自衛官です。
日本には昔から変態飛翔生体(OTF)と呼ばれる生物がいて、国を守ってくれる存在であった、という伝承と、それを今は政府の命で航空自衛隊が管理していて、彼らを守るために、そして隠すために戦闘機で擬態し、操縦するために女性たちが集められている、という物語なのですが。
監督の樋口正嗣氏は「シン・ゴジラ」でも発揮したリアリズムの追及をここでも徹底的に行っており。
さすがにドラゴンの「まそたん」の存在はフィクションではありますが、それ以外の、例えば空自隊員の日常の姿や装備品、舞台となる各務原の風景などを見事に忠実に再現して、見る者をぐいぐいとその物語に引き込んでいってくれます。
物語が進むにつれて明らかになっていくドラゴンの存在の意味と、集められた若い女性ばかりの操縦者たち。
彼女らが挑むミッションの端緒が明らかにはなりましたが、それを温かく見守っているおばあさん(太平洋戦争時にDパイであった『ラバウルの天女』の異名を持つ女性)の瞳には、一見平和そうな時代の風景と、74年前の過去が交錯し、これからの物語の展開に含みを持たせているのです。