細密な絵で描かれた異国情緒溢れる日常のお話
このマンガはとにかく絵の美しさと緻密さがすごい。どのページもそのまま飾っておきたくなる程のクオリティです。
物語の舞台は19世紀中頃の中央アジア。学術調査のために旅をするイギリス人の青年スミスの視点で話は進んでいきます。乙嫁語りの名の通り、スミスが行く土地々々で出会うお嫁さんに焦点が当てられており、その時代の堅苦しい婚姻の形式の中にあっても、それぞれの恋愛に奔走する様子が微笑ましく、時に可笑しく描かれています。
場所によって風習や生活様式が異なるのも面白く、スミスと共に旅をしているような気持ちになれます。大きな騒動もあるものの、基本的に物語は穏やかに展開し、遊牧民族、刺繍、馬、弓矢…etcといった物が好きな人には刺さること間違いなしです。
冒頭でも触れた通り、乙嫁語りの魅力の一つはその緻密な絵にあります。この時代の人々はふんだんに刺繍の施された衣服を身に着けているのですが、どのページも、出てくる登場人物の衣装や部屋の装飾品に、びっしりと刺繍の模様が描き込まれており、その細かさに感嘆します。
また、遊牧民族が描かれているため様々な動物が登場するのですが、皆リアルで躍動感にあふれており、物語を彩る要素となっています。話の面白さだけでなく、ただ絵を眺めているだけでも幸せな気持ちになれる作品です。
気軽に海外へ旅行することのできない時勢ではありますが、代わりにこの物語に没入し、異国の空気に触れてみてはいかがでしょうか。