あの世とこの世の境にある死役所。訪れる数多くの人たちの死に様、生き様に、生きることについて考えさせられる話。
短編集なので、飽きることなくすらすら読めます。
死役所には、事故、病気、他殺、自殺など様々な理由で亡くなった人が訪れます。それぞれの生き様に、やるせない気持ちになったり、憤りを感じたり、生きるということについて深く考えさせられます。
死後に起きた出来事に、生前の自分の行動に後悔する気持ちが生まれても、どうすることもできない。くも膜下出血で植物状態になった真名人に、18年間寄り添い続けた恋人の才。長い年月そばにいてくれたという事実を、真名人は自分の死後初めて知ることになります。この話は読んでいて切ない気持ちになりました。
また死役所で働いている職員がすべて死刑囚という設定というところが感慨深く、職員のハヤシさんの過去は、読んでいてやるせなくて、つらい気持ちになりました。ハヤシさんがしたことは決して許されることではありませんが、ハヤシさんを裏切った妻の行動には酷く憤りを感じます。自分が犯した罪を反省するため、自分の罪と向き合うことを決意するハヤシさんに胸が苦しくなりました。
同じく職員のシ村さんは、冤罪により死刑囚になったという過去があります。これから徐々に明らかにされていくので続きを読むのが楽しみです。