あん(映画)

あん(映画)

『あん』とは、2015年5月に公開された、日本・フランス・ドイツの合作映画。原作は2013年2月に出版された、ドリアン助川による同名小説である。
どら焼き屋の雇われて店長として働いていた千太郎は、美味しいあんの作り方を知っている76歳の女性・吉井徳江を雇う。彼女のおかげで店は繁盛していくのだが、徳江がかつてハンセン病を患っていたという噂が流れたことをきっかけに客は減少。千太郎は徳江を辞めさせなければならなくなったのだが、どうしてもその後の徳江が気になり、彼女の足跡を辿っていく。監督・脚本は河瀨直美。樹木希林が主演を務めた。

maki_latte5のレビュー・評価・感想

あん(映画)
10

自分ではどうにもできない理由で、あきらめた事はありますか?

映画『あん』は、ドリアン助川さんの原作を、河瀨直美監督が、映画化した作品です。
出演者は、故・樹木希林さん、永瀬正敏さん、内田伽羅さん、水野美紀さん、浅田美代子さん、故・市原悦子さん他。
徳江役の樹木さんの演技と、中学生・ワカナ役のその孫の内田さんの共演、河瀨監督作品ならではの、季節感たっぷりの映像美など、注目の点はいくつもあります。

ですが、まずは、何も考えず、初めの場面から、最後の場面での、永瀬正敏さん演じる千太郎の一言まで、
秦基博さんの主題歌『水彩の月』が流れ終わるまで、ただ『あん』を観ることをおすすめします。

『あん』の主要人物は三人です。
どら焼き店「どら春」の雇われ店長・千太郎。
ある日、「どら春」に現れる客・徳江。「どら春」の常連の中学生・ワカナ。
三人とも、人に言わない事情をそれぞれ抱えていました。
ある日、「どら春」に徳江が訪れてから、三人は関わりを深め、店も繁盛していきます。
三人のやりとりは、観る者の心をあたためてくれる、見どころの一つです。

それでも、店に危機がやってきます。思わぬことから、店の客足が減っていきます。
そこでの見どころは、危機を呼ぶきっかけの一人、「どら春」のオーナー役・浅田美代子さんの演技です。
本当にふらりと立ち寄ったような、そのふるまいに注目してください。
「善意」を持った、普通の人がそこにいます。

危機を経て、『あん』の物語の終わりには、桜が咲く時季を迎えます。
初めからこの映画を観た人には、そこでのワカナの歩みや千太郎の言葉に、感じることがきっとあるでしょう。

『あん』は、観る者の心の深いところに、いろんなものを残す映画です。
ぜひ一度、観てみてください。
そして、どら焼きを見かけたら、ひとつ食べながらでも、この映画を思い出して、何度でも、観てください。