ジャンプの新看板、鬼滅の刃の魅力!
鬼滅の刃。売り上げがあの「ワンピース」を超えたことから分かるように、ジャンプで最も熱い漫画である。
舞台は大正時代。相手は鬼。主人公の武器は刀。特に目新しい設定は無い。味方陣営の主力、敵陣営の主力に、強力なキャラ付けをしている所はBLEACHを思わせる。
作画に関しても、味があり、迫力もあるが、万人受けするものではないだろう。
では、鬼滅の刃は何が凄いのか。それは、作品全体に流れる「無常観」と「優しさ」だろう。
鬼滅世界は理不尽に包まれている。善良な人間がある日突然鬼に喰い殺され、あるいは鬼にされる。
味方陣営が決死の覚悟で戦っても、鬼との間には純然な実力差があり、常に一方的な戦いを強いられる。それでも、主人公たちは諦めずに戦い続ける。若い命を散らし、文字通り四肢が欠けても、最期まで戦う。
あまりにも残酷な世界。元凶である敵の親玉が、何の哀しい過去も、同情すべき理由も無い、自分勝手な小物であることも、読者の怒りと悲しみを滾らせる。
ただ、そんな世界で主人公は腐らない。ニヒリズムに陥ったり、やさぐれたり、自分の殻に閉じこもったりしない。
鬼にされた妹を救うため、普通の人々を守るため、「長男」として明るく穏やかに振舞い続ける。
敵である鬼に対しても、哀れみの気持ちを持ち、退治際に手を握ったり、痛みを伴わない技を使ったりする。勿論、優しいが、決して甘くは無い。鬼を見逃すことはなく、必ず退治する。
「日本一慈しい(やさしい)鬼退治」のキャッチコピーに偽りは無い。