「生きる」とは何ぞや。史群アル仙の持つ「力」

かわいい絵柄に重いストーリー。色々な意味合いでのシュールさを持った、漫画家にしてクレパス画家の史群アル仙氏。10歳にして人生の目標を決め、多感な時期に社会に出て表現者としての修行を始めた氏の作品は、そのプロフィールを知るまでもなく惹きつけるものがあります。なまじ「シュール」なために理解されない、しにくい部分もあるかもしれませんが、氏の作品には確かに力が宿っている…。

史群アル仙プロフィール

漫画家、クレパス画家。1990年誕生。平成生まれながら昭和漫画、特に手塚治虫氏の作品に惹かれてその作風、画風を引き継ぐことを10歳にして決意。中学時代、周囲と馴染めず引きこもり、ネット依存症になるも、依存症仲間の「外に出てみようと思う」との書き込みで勇気を得て、アルバイトで生計を立てていた。独学で漫画やクレパス画を学び、芸術家の菩須彦(ぼすひこ。通称ボス)の下21歳から本格的に活動をスタート。ウェブ上にて漫画やクレパス画の作品を掲載しつつ、個展や他アーティストとのコラボも行う。精神病院に通院歴があるものの、当初は誤診されていた。菩須彦氏の助言で病院を変え、ADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断される。ADHDの症状(氏自身の体験談)に悩まされつつ、周囲の助力もあり、アーティストとしての道を歩む。悩んでいた頃、ニーチェの名言にも助けられた模様。名前は「しむれ・あるせん」と読む。

漫画作品

ツイッターで作品の人気に火が付いたというのが現代的。しかし「もっと年上の人が描いているのかと思った」といった反応があり、20代とは思えない深さ、鋭さに胸打たれるファンも多いようです。

絵だけではなく、内容も何だか胸に来るとの評判だったようですし、実際「来ます」。

衝撃のラスト。

可愛い絵柄で重いものぶっこんでくる。そんな作家は数多いですけど、この人の場合じわじわ来るんですよね。変にリアルと言いますか。心に重いものを抱えていてもいなくても、共感できそうな物語が多々あります。

一見かわいいけど…?

色々勘ぐっちゃいそうですが、その前に衝撃受けます。「愛」「生きる」。そんな概念を真正面から見つめ、鋭く突いているような。

氏の死生観

「1ページ漫画」をはじめ、氏の作品には必ず日付が入っています。それは「憧れの神様」手塚治虫氏と関係がありました。ヒーローにして神様の手塚治虫先生は、自分が生まれる前に亡くなった。その事実を知った時に、「死」というものを意識し、作品に日付を入れるようになったそうです。「若い身空で」なんて言っても、日付を入れるに至った思考が「覚悟」を感じさせます。長生きしてほしいですけども。

1ページ漫画執筆に至った経緯

アル仙氏には、昭和漫画の絵柄、作風を受け継ぐという使命感と共にADHDという性質を持っていました。過度に集中する、悪気なく思ったことを口にしてしまうと言った症状(アル仙氏の場合)なのですが、これがアル仙氏の運命を決めることとなりました。初めて東京に持ち込みに行きますが、漫画が採用されることはありませんでした。絵柄が古いからと思い込んでいたアル仙氏ですが、菩須彦氏曰く「ストーリーがちゃんとしてない。焦って描いているから、話が滅茶苦茶になる。まずは1ページずつから描いて見ろ」と言われたのがきっかけとなり、執筆開始。いろんな人に見てもらおうと軽い気持ちでツイッターに挙げたところ、反響を呼んだようです(『メンタルチップス』より)。

Webで公開された「1ページ漫画」以外の漫画作品

『臆病の穴』

オムニバス形式。決して甘くない現実や理不尽な世界をシュールに、かつ愛おしく描いてます。ウェブ上でのキャッチコピーにあるような「愛」がテーマのようですが、その「愛」の形も一つではなく。親子愛、自己愛、男女愛エトセトラ。そしてそれらが時にもたらす悲劇が大部分。最終話など、希望を匂わせる物語ももちろんありますが、大体がモヤモヤを残す終わり方。良くも悪くも胸を締め付け、惹きつけます。現在は公開されていませんが、単行本全2巻が発売中です。

『アオキヒビハ。』

27歳ながら無職で能天気(というか前向き?)、1話目で家から追い出されたヤギオやロックスターを夢見る花、苦労人な酒飲みのカツなどが登場。こちらは比較的現実味があります。話す犬のキヨミ(ヤギオに片思い)や、ヤギオの住んでいるアパートの幽霊などが登場しますが。ヤギオの「明るさ」あれど、やっぱりほろ苦い展開もまたある。主人公がアラサーなのに「青春」といった言葉が似合う一作です。コミックス全1巻。

えどまち
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@edono78

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