意外に熱かったギャグ漫画『とってもラッキーマン』勝利・友情・努力の三兄弟

勝利、友情、努力。それは『少年ジャンプ』の「三本柱」と呼ばれる重大要素。(最近ではそうでもないとも言われてますが)かつて連載されていた『とってもラッキーマン』という漫画では、この「三本柱」を体現したキャラクターが登場しました。名前がそのまま「勝利マン」「友情マン」「努力マン」なわけですが、とにかく熱いです、この三兄弟。

針千本飲むのが怖い

後半部分ですが、真相を知った努力マンが兄との共闘を申し出るシーン。熱いです。

妨害工作があってもめげずに修行を続け、自力でヒーローになる辺り努力マンは立派ですわ…。それもこれも、元は「守ってやるからな」と強く優しい兄に憧れを抱いたことが原因という、皮肉と言えば皮肉なきっかけでした。

勝つためには手段を選びません。

今でこそ「平和を守る」ため勝とうとする勝利マンですが、根底には父の言葉があったのかもしれません。「死んだら負け」「絶対負けないヒーローになるんだぞ」といった事実上の遺言に、一押しされたように。

この辺アニメでやってほしかった…。

ちなみに人気投票で2位を獲得した際、実際の投票数に「1億」と付け足し、「俺が1位だ」なんてやってました、勝利マン。3票差で3位だった努力マンは「兄さんに近づくためもっと努力せねば」と闘志を燃やす。この兄弟らしい人気投票結果発表です。

ラッキーマンキャラソン 努力ブラザーズのテーマ

三兄弟キャラソン。

三兄弟の父・三本柱マン

『ジャンプ』の三本柱たる「勝利、友情、努力」ですが、彼らの父がその「三本柱」でした。この作品世界には宇宙の裏側、「裏宇宙」なんてものが存在するのですが、三本柱マンは裏宇宙の敵と戦い死亡。三兄弟は『裏宇宙編』で父の因縁の相手、さっちゃんと戦うことになり、合体。かつての父の雄姿を再現したような三本柱マンJr.となるのでした。

三本柱マン、バランスのいい人だったんじゃないでしょうか。息子たちは皆極端ですけども。

この時の戦いは熱かったです。というか『裏宇宙編』自体が何気に深く、熱い内容ではありました。自らの父を攻撃したさっちゃんと、父と同じ姿になって戦う三兄弟の対比、さっちゃんと黄桜の絆、三兄弟の絆などなど。

和解後のタッグマッチに見る努力マン、勝利マン

よっちゃんこと世直しマンにより宇宙が危機に陥り、彼の配下とトーナメント試合をすることに。勝利マンの相手は巨漢のパワーマンと、武器型の鋼鉄マン。つまり、2対1。「針千本」が誤解だったこともあり、和解して審判にもタッグマッチを認めさせた兄弟。しかし努力マンの強さを知るや、敵方が人質を取る暴挙に出ました。相手はスーパースターマン(目立ちたがり屋の地球人が改造手術でヒーローになった姿)の幼い妹。「勝ちゃいいんだ」が持論の勝利マンさえ怒りを見せていました。「その子を放せ」と自分の命を投げ出そうとする努力マンですが、ラッキーマンのラッキーもあり、人質は解放。とはいえ不意打ちだったため人質は高く放り投げられることに。ピンチはまだ終わっていなかったのです。

よっちゃん、原作だと改心して仲間になりました。

「安心するのは早いぞ!」とたしなめた勝利マンは、弟に自分を蹴飛ばすように言います。しかし戸惑う努力マン。重傷の兄を本当に蹴っていいものなのか。自分が飛んで助けたほうが早いのでは…。迷った末兄を蹴り出し、救出成功。ヒーローとして認めた弟に、ヒーローの本分たる弱者の救護を見せるため、また「万全の状態のお前なら勝てる見込みはある。タッグマッチだから片方が勝てばいい」と後を託す意味もあったんでしょう。事実、幼子を盾にする卑怯なパワーマン相手に、努力マンは胸の文字を「怒力」にしてまで怒り、勝利を得ました。修行期間こそ長くとも、ヒーローとしての実働期間は短いですからね。経験不足による判断ミスが折角の努力を無駄にしてしまうことだってあるはず。それらをほんのわずかな行動で示せる勝利マン、いい兄にしてヒーローです。

よっちゃん、昔は善側だったんですよ…。

餃子のエピソードから見る三兄弟

幼少期の餃子のエピソードだけでも、努力マン勝利マンの信念がよーく出てました。美味しい餃子を食べさせたいと努力する努力マン、クッソまずかったその餃子を弟の為完食し、死にかけても「俺は負けない」とうわ言のように言っていた勝利マン…。友情マンはというと「僕の分も兄さんにあげるよ」と次男坊のちゃっかりさを発揮してました。空気読むのうまい辺り、さすが友達が多いだけのことはあります。

その後連日、毎食餃子が食卓に上ったという…。体力回復後料理は友情マンの担当になりました。

その後、「敵」との戦いで「餃子早食い対決」が催されるんですが、この一件で餃子がトラウマになっている勝利マンは汗だく。事情を知らずに成長した努力マンは「餃子は兄さんの大好物だから勝てる!」と信頼しきっていました。友情マンによって事実を知らされて罪悪感にまみれる弟に、勝利マンは…。強者のヒーローですが地球でもよくある三兄弟の関係といった感じです。

まとめ

ヒーローものでこの絵柄、しかし「悪者と戦って、勝ったよかったわーい」という話ではないんですね。

『バクマン』のネーム。絵が似てるとの指摘あり。

作者のガモウひろし氏は後大場つぐみという名前で原作を担当し、『DEATH NOTE』『バクマン』といったヒットを飛ばします(噂とされてましたがほぼ確定のようです)。絵柄で損した漫画の一つかもしれませんが、この緩い絵柄だからこそ発揮できた味もあるかもしれません。意外と深い作品であることを知らしめてくれる三兄弟でした。

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