「新鮮」グルメ小説『異世界食堂』で料理、スウィーツの魅力再認識?

タイトルからしてタダゴトでないことを物語る思わせるファンタジー小説。舞台が舞台だけに、何だかいろいろと「新鮮」な感じです。

誰にとっての「異世界」か?

syosetu.com

『小説家になろう』に投稿されていた作品なんですが、こちらのサイトでは「異世界トリップ」系の物語が特に人気を集めている模様。この作品も同じく「異世界もの」なんですが、「異世界」とは、そもそも「自分の住んでいる世界とは異なる場所」のこと。

見て感心、食べてびっくり異世界料理です。

エルフ、リザードマン、小人や超常的存在等々「ファンタジー世界」の住民が「こっちの世界」にやってきて「こっちの料理」を堪能するお話です。つまり、食される「珍しい料理」とは現実にあるもの。それが食べる側にとっては非常に新鮮に映り、味覚を通して感動に変わるわけです。

一枚の扉が世界を変える

で、どうやって「こっちの世界」に来るか。それは猫の看板がかかった「扉」から。この「扉」、あちらの世界に点在しているようですが、七日に一度、土曜日だけしか繋がらない。(その日は休業ということになっています)そして、通れるのは一人(というか一組)だけ。料理のお替り、持ち帰りは可能。支払いはあちらの世界の通貨、というのが「土曜日」のルール。メニューも現地語のものが用意されています。ちなみに、パフェだけで数種類あるそうな。

「異世界」の味に胃袋をつかまれたひとびと

初めての客にとっては「こちら」の食堂内部は何だか変異に感じるようで、大概警戒してます。でも嫌な感じはしないし、店主は人がよさそうだし、と席について初めて聞く料理を注文。然る後お食事スタート。毎回がそんな流れではなく、「常連客」も訪れます。その場合描かれるのが彼らの立場や背景。ある超常者は大軍を一瞬で焼き尽くせますが律儀に主人とのルールを守り、ある種族は「勇者だけが腹いっぱい食べられる」権利を得る代わりに皆に土産を持ち帰らなくてはならないとの種族内でのルールを守り。そのさまが何だか微笑ましいのです。

一番左、「赤の女王」が食べているのはビーフシチューです。寸胴鍋入りを一昼夜かけて味わいます。

彼らがルールを守るのもひとえに「異世界」の味に魅せられたため。七日に一度の限定とあれば、同じものばっかり注文してしまうのも無理はありません。で、時には口論にもなるという。それも何だか微笑ましいんですよね。狩人だったり武士だったりと皆戦闘力ありそうなのに、議論の内容が「自分が食べてるのが一番うまい、食ってみろ!」だからでしょうか。「惚れた相手の胃袋をつかめ」とは言いますが、皆さんすっかり「異世界」の料理に胃袋キャッチされてます。「誘惑に負けた」と肩を落とす人もいれば、意気揚々と新しい「楽しみ」を覚え帰っていく人物も。人種も何も千差万別なのに、「ここの料理が好き」なのは共通してるんです。ここまで惚れ込まれたら料理人冥利に尽きるかと。

心身ともに鍛えられたり、時に癒したり。「食」の力は計り知れません。

「食の力」については『ONE PIECE』でも語られてました。アクの強すぎるオネエばかりの国にサンジがとどまることを決意したのは彼ら、いや彼女らの「食」に感心したため。食に対する信念を持っており、興味を覚えた料理のレシピは聞いてから旅に出るほどのサンジのこと。国のレシピを手に入れるため奮闘修行するのでした。

まとめ・兎に角描写がうまい飯テロ小説

話を戻しましょう。読んでいる方も空腹を覚えそうなのはやはり舞台や饗される料理が「こちら」のものだからなんでしょうね。見知った、見慣れた料理、スウィーツが「あちら」の住民には物珍しい珍味なんです。しかもその描写がとんでもなくうまい。見た目、触感、そして味。すべてに置いて完璧なまでに文章で表現。だから、食べたくもなる。実際にある料理だから味も容易に想像できる。食と文章、そして異世界の融合です。

目次もメニュー風。

目からうろこが落ちてくる、新感覚の飯テロ小説です。続編も出ており、そちらでは「あちら」の住民が従業員をやっているとか?

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