誤解されたヒロイン・高坂桐乃

いつの間にか、3大クズヒロインというカテゴリがあるらしい。よくよく考えなくともひどい評価だが、どのヒロインもそこまでひどい評価を受ける性格でもないと思う。思い切って、少し弁護してみたいと考え、筆を執る。ここではその3大クズヒロインの筆頭、高坂桐乃さんについて解説していく。

高坂桐乃の一般的評価

表の顔は容姿端麗で成績優秀、品行方正、陸上で数多く大会に出場し、何でも頼れる先輩。そして某誌にて読者モデルを務める。
小説の才もあり、ケータイ小説を執筆し後に書籍として出版、中学生にして印税収入もある。

家庭では兄(京介)につらく当たり、ほぼ無視している。兄は妹の優秀さに劣等感を抱き、2人は冷戦状態。

ひょんなことから兄に人生相談を持ち込んだ妹と、その兄とのちょっとしたラブストーリー…というと聞こえはいいが、このヒロインは三大クズラノベヒロインの一角と言われるほど、評価が分かれる。ここで少し弁護してみたい。

高坂桐乃の性格と行動原理

まず三大クズヒロインと言われるだけの行動をする前に、このキャラクターの性格を述べる。
まず中学生女子にしてエロゲーマー(妹モノ限定)である。
そしてそのソフトやグッズ欲しさに兄(未成年)をゲームショップに並ばせるなど社会的に不利になることをためらいもなくさせる。
その過程で、兄京介の人柄に惹かれ、できた彼女を別れさせたり、汚名を着せたりする。
兄の幼馴染(女性)に陰湿な嫌がらせを繰り返し、殴り合いの喧嘩の果てにほぼ絶縁状態となる。

要はお兄ちゃん大好きをこじらせた上に、ツンデレを患い、極限までわがままを繰り返す暴君である。

そんな彼女は最終的に兄と「恋人関係」になるわけだが、それも中学卒業と同時に終了。
その後の関係は元の兄妹に戻る。しかしその際、兄京介の周囲にあった幼馴染、後輩×2、アイドルの卵、お嬢様などの恋愛フラグを全てべきべきにへし折る。

うん、お兄ちゃんが京介君でよかったねという内容である。

そもそもライトノベルの作品構造が誤解を与える

しかし実はこの非難・批判は実は物語構造上仕方ないことである。理由は以下に述べる。

この作品はすべて主人公京介の視点で語られている。
つまり最初から偏向がかかっているのである。主人公京介は最初から「妹は自分のことがキライ」と思い込んでいるので、ことさらひどく描かれているのである。このキャラクターの性格上、おとなしく「お願いする」ことはないが、本当は異なる性質・性格を持っている可能性も少なくない。もともとリアルの妹なぞ、兄には冷淡かつ傲慢な態度を取ることが多いので、リアルな描写と言ってしまえばそれまでである。

そうなると彼女が言ったわがままは、本当はもっと異なるものであるはずだった…と言えないこともない。何と言っても京介視点で書かれるために、最後の最後まで彼女が何を考え、何を思い、どうしてそのような行動に至ったか語られないのであるから仕方がない。

2期の終盤にて、やっと気持ちがエピソードとして語られるが、極端な話、最初にこの話が語られていたらもっと人気は出たであろうと言える。

大体叙述トリックのせいと言っても過言ではないのである。

萌えアニメ(ラノベ)の性質上兄京介にモテ期をもたらせた

そして、萌えアニメの構造上、萌えキャラを複数登場させなければならない。
つまり、大人の事情で複数のキャラのかわいいところを描かなければならない。
しかし、テーマが「兄から見た妹」が「実は重度のブラコン」というギャップ萌えがテーマなわけで、しかも兄妹で必要以上に仲良くなってしまうことが目標なわけだから、他のキャラとのフラグは物語の添え物でしかなくなる、それ以上にこの兄妹の異常性を際立させるための演出の一部になる。

しかし、兄のモテ期は、「実の妹のわがままをこんなに聞いてくれるなら、恋人になったらもっとすごい」という「妹ありき」のものであると見える。

存外、この2人、一年間をかけてリアルなギャルゲーをプレイしていたのではないだろうか?
2人にとっては「ゲーム」、つまり「本気の遊び」をしていたということと、そういう見方をしてみればこの作品の評価も変わってくるかもしれない。

まとめ 真の戦犯は誰か?

この2人を「ゲーマー」にしてしまったのは、間違いなくこの人、京介と桐乃の幼馴染、田村麻奈美さんの恋愛観にある。
この幼馴染の恋愛戦略は「待ち」の一手。素朴に幼馴染が結婚相手になると信じている。その偏見に近い先入観が、2人を暴走させてしまったと言えなくもないだろう。
さっさと押し倒したら…物語にはならなかっただろうが、2人の暴走もなかったし、視聴者をやきもきさせることはなかった。私はそう思う。
ここで学ぶべき教訓は、恋愛に「待ち」の一手は相手が肉食系の時に限る、ということか。

keeper
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