80年代のミュージックシーンを彩った一陣の風 「ネオアコ」を振り返る。

「ネオアコ」は日本でしか通じない音楽ジャンルの名前。イギリスを中心としたヨーロッパ各地で1980年代に盛り上がりを見せたムーブメントで、アコースティックな響き、透明感、瑞々しい感覚が特徴の音作りがされていました。日本では「渋谷系」と呼ばれた人達に好まれ、1990年代のはじめ頃にネオアコ人気が再燃。ファッションにまで影響を与えました。ここでは特に心の琴線に触れるような作品達を紹介します。

ネオアコとは、ネオアコースティックの略称で、この言葉自体は和製英語ですが、この言葉が指す「アコースティック楽器を中心とした演奏」「透明感のある音」「みずみずしい感性」を感じさせるミュージシャンは1980年代初期から半ばごろにかけて、イギリスを中心に数多く登場していました。
WALK OUT TO WINTER / AZTEC CAMERA
「アズカメ」などと省略して呼ばれてたアズテク・カメラ。ネオアコシーンには欠かせないバンドです。ボーカルのロディ・フレームは超美形で、女子の間で大変な人気でした。PVがこの曲の雰囲気とほんとにあっていて胸がきゅんとします。「青春の〜」という前フリがぴったり来る感じですね。
THERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUT / THE SMITHS
THE SMITHSはネオアコという範疇を超えて、80年代のミュージックシーンでは絶対にはずすことのできないバンドです。ボーカルのモリッシーが紡ぐ、美しいけれど徹底的にネガティブな詩に、濁りのないジョニー・マーのギター。メロディそのものは明るいのに、歌われている内容は大体「絶望的」なものばかりというスミスにしかない世界は、比較できるようなものが他にありません。
ここで取り上げた曲も、愛する人に「もし今君と一緒に10トントラックにひき殺されたら、それは最高に幸せな死に方だろう」などと「明るく」モリッシーが歌っています。
THANK YOU / THE PALE FOUNTAINS
ペイル・ファウンテンズのアルバム「PACIFIC STREET」には捨て曲がひとつもない!と私は断言します。ここで取り上げた曲はアルバムのラストに入っていて、聞いた後は映画を見終わったような余韻が残るんです。実はこの曲と並んでアルバム1曲目の「REACH」も超おすすめなんですが、動画が見つかりませんでした。(残念!)アルバムを通して、若者特有のメランコリーや躍動感に彩られた秀逸な出来です。
COME ON HOME / EVERYTHING BUT THE GIRL
トレイシー・ソーンとベン・ワットによる夫婦デュオ。トレイシーの低めでエモーショナルな歌声が素敵です。チョイスした曲はオーケストラアレンジが施されたゴージャスな作品。
JET SET JUNTA /THE MONOCHROME SET
PVはちょっと60年代の匂いがする仕上がり。タイトでお洒落な雰囲気が全編に漂う作品です。
FAVORITE SHIRTS / HAIRCUT 100
カテゴリとしてはネオアコというよりはニューウェイブ(の中の更にファンカラティーナという括り)になるのでしょうが、この曲のギターのカッティング具合はとてもネオアコっぽいです。
ヴォーカルのニック・ヘイワードは当時アイドル的な売れ方をしていましたね。
恋とマシンガン/フリッパーズ・ギター
ここまで紹介してきた「ネオアコ」を見事に消化して自分たちのものにし、日本でのネオアコ人気を決定付けたフリッパーズ・ギターの作品です。
パンクミュージックが吹き荒れた後、その反動のように現れたネオアコ。別称で「ギター・ポップ」と呼ばれることもあるように、ギターの音色を大切にした音楽でもありました。そのスピリットは90年代以降に現れるミスチルなどのバンドへと引き継がれて行くことになります。