リアリティと感動のミリタリー映画十五選 WWⅡ編
戦争映画は映画のジャンルの中では、大きなジャンルでは無く、人を選ぶジャンルではありますが、その中にはニュースでは分からない、本にも書いてない、現実では考えられないリアリティと戦争とはほど遠い感動が秘められていたりします。
そこでオススメのミリタリー映画を紹介したいと思います。
シン・レッド・ライン
1998年 監督:テレンス・マリック 制作:アメリカ
キャッチコピーは「パラダイスは、若者たちの魂の中にある。」
1942年、太平洋の激戦地ガダルカナル島に日本軍の航空基地が建設されるという情報をアメリカは入手する。その為、軍上層部はガダルカナル島への上陸を決行するが、思いがけない激しい機銃掃射に合い後退する。しかし、上官から下された命は再度の上陸と橋頭堡のダッシュであった。
モデルは「シン・レッド・ライン」、若き兵士たちが戦場で生死を狭間を生き抜く作品なのだが、遠景の山々、広がる草原、丘陵のうねるように滑らかな緑の起伏等、美しい情景の中戦争の惨さの演出や、仲間の為では無く生きる為だけに戦って死んでいく若い兵士達、そしてそんな彼らの生死への苦悩など華やかさも感動もない一人一人の描写すらない淡々としたドキュメンタリー映画を観ている様な映画です。
シンドラーのリスト
1993年 監督: スティーヴン・スピルバーグ 制作:アメリカ 主演はリーアム・ニーソン
キャッチコピーは 「1つの命を救う者が世界を救える―」
1939年、ポーランドはナチスドイツの占領下にあり、生活するユダヤ人は次々と強制収容所へ送られていっていた。そんな時、ナチス党員のオスカー・シンドラーは一儲けする為にポーランドを訪れ、工場を買取琺瑯容器事業を始めた。優秀な労働力、優秀な会計士等殆どを安価なユダヤ人で固めたシンドラーの会社だが、遂に強硬派のSS将校がポーランドに赴任し、シンドラーの工場のユダヤ人達にも危機が迫る。今まで金儲けにしか関心しかなかったシンドラーは多くのユダヤ人と触れるにつれ、心境の変化が訪れ始め、そしてあるリストの作成に着手し始める。
モデルはドイツ人実業家オスカー・シンドラー、彼の1100人にものぼるユダヤ人の命を救った実話を基にした作品で、ホロコースト映画の代表作と言われています。
また、監督スピルーバーグの初のアカデミー賞受賞作であり、それ以外にも多くの賞を受賞するなど、多数の高い評価を受けた作品です。
空軍大戦略
1969年 監督:ガイ・ハミルトン 制作:イギリス
1940年、ドイツはフランスを占領し、次の目標としイギリスした。2500機を有するドイツに600機しかないイギリスは制空権を巡って戦う。ある時、ドイツ軍は間違えてロンドンを空襲してしまう。怒りで戦意の上がった空軍パイロット達のお陰で、劣勢であったイギリス軍は急激に盛り返していき、時の首相チャーチルはドイツのイギリス侵攻を諦めさせる為に大作戦を決定する。
イギリスとドイツの闘い「バトルオブブリテン」を題材とした作品であり、主人公のいない群像劇となっています。飛行している戦闘機などは全て実物を使用していたり、また出演者もイギリス人のみと拘りが一面に見られる作品となっています。最後辺りの実在機が画面を所狭しと飛び回るシーンは圧巻そのものです。
史上最大の作戦
1962年 The Longest Day 監督:ケン・アナキン、ベルンハルト・ヴィッキ、アンドリュー・マートン 制作:アメリカ
ノルマンディー上陸作戦の前日から上陸作戦終了まで描いたノンフィクション映画で、戦争の滑稽さ、人間の残酷性、その中でも人間の尊厳を守ったり等、戦争の本当の姿を描いた作品だと評価は高く、また映画としては3時間弱と長い作品です。また群像劇でもなく、ほぼドキュメンタリーに近い撮影となっており、3時間弱と長くもなっています。
父親への星条旗 硫黄島からの手紙
2006年 監督:クリント・イーストウッド 制作:アメリカ
キャッチコピーは「戦争を終わらせた一枚の写真。」「日本から見た「硫黄島」」
ウィスコンシン州で人生を終わらせようとする老人。彼は1945年に硫黄島で衛生兵として従軍していた。その時撮られた写真によって彼はアメリカの英雄となったが、家族友人には決して写真の事は語らなかった。彼の息子はその写真から戦争の、硫黄島の真実を辿っていく。
硫黄島から数百通の手紙が見つかった。それは硫黄島で玉砕した男達の届くはずもない家族へ当てた手紙だった。彼らは家族に何を伝えようとしたのか。61年の歳月を経て、一通一通から硫黄島で散った男達の素顔と、硫黄島の素顔を辿っていく。
連続公開された同監督の2作品、一作品に両軍を描くのでは無く、2作品にすることによって2時間強という時間で兵士一人一人の素顔や細かな演出、感情描写など丁寧過ぎる程描かれている。両作品とも高い評価を得ているだけでなく、互いの国の国民からも評判は高い作品です。
フューリー
2014年 監督:デヴィッド・エアー 制作:アメリカイギリス合作 主演はブラッド・ピット
キャッチコピー「第2次世界大戦下、たった一台の戦車で300人のドイツ軍部隊と渡り合った5人」
1945年、連合国はナチスドイツに最後の攻勢を掛ける為に、第2機甲師団第66機甲連隊に進撃を命じる。所属するシャーマン「フューリー」は歴戦の猛者達が乗車していたが、補充として新兵の「ノーマン」が派遣されてくる。戦場も戦車も初めてのノーマンは後退していくドイツが、民間人を見せしめにしたり自らの街を燃やすなど民間人を巻き込んだ戦いを行うに激しい憎悪を燃やしていく。
小さな町の防衛を任せられた第2機甲師団第66機甲連隊は、ドイツの反抗に備えて通過予定の交差点の死守をフューリーの小隊に命じる。しかし、到着前にドイツ戦車と遭遇し、小隊はフューリーを残すのみとなる。更にフューリーは地雷を踏み走行不能となる。そして交差点の真ん中で走行不能となったフューリーに300名近いドイツ兵が迫っていた。
ミリタリー映画というよりはアクション映画に近い作品です。戦場のリアルさというよりはド迫力な演出が光る作品です。
蛍の墓
1988年 監督:高畑勲 制作:日本
キャッチコピーは 「4歳と14歳で、生きようと思った」 「忘れものを、届けにきました」
昭和20年、神戸に住む兄・清太と妹・節子は母と家を失い、叔母の家に居候するがお互いに軋轢が生まれ、清太は節子を連れ、川辺の横塹壕に身を置いた。最初は兄妹水入らずであったが、徐々に食料が尽き始め、清太や節子はどんどん衰弱していってしまう。
スタジオジブリ制作のアニメ映画、原作は短編小説「火垂るの墓」なのだが、海外での評価も高く、イギリスでも実写映画化される程の作品です。幼い兄妹が小さい命を懸命に燃やし生きていくが、無情にも蛍の様に儚く散っていく命に対する鎮魂を重きを置いた作品と言えます。
映画じゃないけど…バンド・オブ・ブラザーズシリーズ
2001年 監督:スティーヴン・スピルバーグ、トム・ハンクス 制作はアメリカ、イギリス
第二次世界大戦中実在したアメリカ陸軍第101空挺師団第506歩兵連隊第2大隊E中隊の訓練から対ドイツ戦勝利・終戦までを描く。
BBC/HBOのテレビドラマシリーズとして制作された作品だが、ドラマとは思えない程のクオリティと制作費用は尋常ではないとしか言いようがありません。
群像劇となっているが、同じチームであっても戦死したり、大きな活躍する訳でもない、現実感のシナリオになっている。
如何でしょうか?昨今、メディアではテロや紛争等が取り沙汰されているが、我々は現実の戦争に関して触れた事のない人は多いと思います。
事実、日本は唯一被爆国ではありますが、その時代を生きていた方たちも少なくなり語り継がれる機会も減っています。
映画では本当の惨状は理解できないものですが、それでもこの映画達から伝わったモノの100倍の物が現実と思えば、戦争の過酷さ、悲惨さ、冷酷さも理解できるのかもしれません。