音楽ジャンルとしての「ブラックメタル」の起源は80年代と言われていますが、今回は特に「ブラック第二世代」とも言われる90年代初期のノルウェーブラックにフォーカスしようと思います。
Mayhem(メイヘム)はこの時代のブラックメタルを代表するバンドのひとつです。
ボーカルを務めていたデッドは、精神状態が不安定であることが多く、「墓の匂いをつけたい」という理由で墓場に自分のステージ衣装を埋めるなどの奇行も目立っていました。
死に対する関心が強かった彼は、91年、自宅にて銃で頭を打ち抜いて自殺。
彼の遺体は、同居人でありメイヘムの中心メンバーであるユーロニモスの手によって写真に収められ、その写真はメイヘムのブートアルバムのジャケットに使用されています。
タイトル「Dawn of the Black Hearts」で検索すると詳細がヒットしますが、ジャケットのグロ写真も同時にヒットしますので、興味本位で検索することはおすすめしません。
ノルウェーのブラックメタルの歴史を語る上で外せない用語として「インナーサークル」があります。
インナーサークルとは、90年代初期にノルウェーで活躍していたブラックメタルバンドと、その関係者を指して使われていた言葉。
ノルウェーの初期ブラックメタルにおいては特に「邪悪である」ということに価値が見出されていたため、「誰が一番邪悪なのか?」を競うようにして過激行為や犯罪行為に手を染める人が多く存在していました。
犯罪行為の中には、教会に火をつけるなどの反キリスト的思想の象徴ともとれるものが多くあり、総じて「ブラックメタルバンド=悪魔崇拝思想集団」という偏った認識もされていたようです。
しかし、キリストの存在はタブーを侵すという目的においては衝撃をもたらしやすく、効果的であったというだけで、インナーサークルに区分されていた人のうちどれだけが本当に悪魔的思想を信仰していたのかは定かではありません。
90年代初期のノルウェーブラックメタルは、上記ようにダークな一面を持っていますが、楽曲のクオリティが高いからこそそうした思想が広がっていったことは間違いありません。
ただ過激なだけではなく、楽曲を通して表現されるものに魅力があったからこそ、今でも伝説として語られているのです。