10歳から15歳少年への クリスマスプレゼント
数日前、「10歳から15歳少女へのクリスマスプレゼント」と題して書籍紹介をしました。
少女版を書いたなら、少年版も書こうと思い、さっそく児童書をピックアップ!今回は徳間書店限定ではなく、さまざまな出版社から作品を選んでみました。
まだまだ可愛さを残す小学生の男の子、思春期真っただ中の男子中学生のギフトにいかがですか?
小学3・4年生におすすめの作品
『妖怪一家 九十九さん』
小学生の男の子って、「おもしろい本、ない?」だとか、「マンガ、買っていい?(借りていい?)」だとかばかり口にしています。女の子と比べると、物語に親しむ割合が低く、「おもしろい」の基準も個人差があるというか、好みにばらつきがあります。
一冊の本をめぐって、「めっちゃおもしろい」と絶賛する子がいれば、「1ページ読んで閉じた」と結末まですすめず投げ出してしまう子がいます。
そんななか、児童文学作家の富安陽子が作りだす物語には、子どもたちから一定の評価があります。富安作品には、「妖怪」と「キツネ」が多く登場します。
『妖怪一家 九十九さん』は、九十九家をはじめとした、たくさんの妖怪が人間と仲良く暮らそうと奮闘する物語です。物語の冒頭に、一家の大黒柱ヌラリヒョンと市役所の地域共生課のやりとりがあります。小学生がおもわず笑ってしまうような会話なので、本文より引用します。
「みなさん、最初は驚かれます。でも、実際にもう、団地暮らしを始めている方もたくさんいらっしゃるんですよ。人間と、先住妖怪が共生する団地が、実はあちこちに登場していることを、みなさんはごぞんじないだけです」
「まさか……。信じられない。人間の家というのは、あの箱みたいな、せまくるしい容れ物のことだろう?あんな箱の中に入って、バケモノが……いや、つまり、妖怪が暮らせるはずが……」(中略)
「例えば団地の中に、もともとあった雑木林や池を残したり、公園として整備したり……。そういう多彩な住環境を無料で提供しております。そのかわり、妖怪のみなさんには、団地運営のお手伝いをしていただく……というのが、地域共生プロジェクトの基本的な方針です」
大人のわたしでも、思わず吹きだしてしまいます。
九十九家は人間が住む団地の地下十二階を居住地として、新しい生活が始まるのです。もちろん、妖怪が暮らすわけですから、さまざまなアクシデントが起こり、そのたびに、ほかの妖怪や市役所職員といっしょになって問題を解決していきます。
富安作品は1巻が1話完結型ですが、主人公を変えずに物語の続きがあるのも魅力の一つといえます。『妖怪一家』は4巻まで出版されていて、『シノダ!』『内科・オバケ科・ホオズキ医院』もシリーズ本として人気です。
1巻を完読すれば、どうしても続きが読みたくなる―
小学3・4年生のうちに読書の楽しさがわかると、その後の人生が豊かになることは周知のとおりです。
『シノダ! チビ竜と魔法の実』
小学5・6年生におすすめの本
『命をつなげ!ドクターヘリ』
本には物語だけでなく、伝記、図鑑、ノンフィクションというジャンルがあります。女子は物語派が多いのですが、男子は伝記(といっても、歴史マンガ)や図鑑(といっても、娯楽要素が強いギネス世界記録など)を手にとって読む姿をよく見かけます。
小学5・6年生におすすめしたいのが、ノンフィクションの作品です。講談社の青い鳥文庫は多彩なラインナップで、さまざまな分野の話を取り上げています。
『命をつなげ!ドクターヘリ』は、千葉北総病院を取材した岩貞さんが、物語風にアレンジしたものです。ドクターヘリに乗る医師・新庄を中心に話はすすみます。
カバー表紙には、作品をつぎのように紹介しています。
ドクターヘリが飛べば、
みんなが助かるわけじゃない。
ヘリコプターが着陸する場所まで
患者を搬送する救急車、
安全に着陸できるよう
準備をする消防隊。
みんなの協力がなければ、
ドクヘリだけでは、
なにもできないんだ。
高学年にもなると、中学生になる期待と不安、大人になることへの憧れと恐れ、いろいろな気持ちがぶつかりあいます。そんな時期に、現実の社会に目を向けることは大切です。本をとおして知識を増やしたり、世間で起こる出来事に関心をもったりすることは、成長の過程でとても重要な役割をはたしてくれます。
『ぼくは「つばめ」のデザイナー』
中学生におすすめの本
『エイジ』
作家・重松清の名を知る人も多いことでしょう。最近では作品がドラマ化されて話題になりましたが、子どもを題材にした小説もいくつかあります。
『エイジ』は中学二年生の男子・エイジの成長物語です。ごく平凡な中学生活を送っていたある日、クラスメートが通り魔事件を起こします。クラスだけでなく、学校、地域が騒然となりますが、エイジは事件とクラスメート(犯人)と一定の距離を保ちます。無関心でいることを装うのです。
ほかのクラスメートとの会話、気になる女子とのやりとり、どの場面も思春期らしい、あやふやな(決定打がないというか)言動で物語はすすみます。けれど、主軸に描かれた事件があるからこそ、その喋りも行動も見逃すことができず、自分(大人)は中学生になったようにどっぷり話に引き込まれてしまうのです。
通り魔がウチのクラスにいた― と、ぼくたちはまだ決めつけていなかった。決めたくなかった。タカやんが学校を休み、土谷先生の数学の授業は自習になり、ヘリコプターが一機、街の上空を飛んでいる。それもぜんぶ小さな偶然にして片付けたかった。
―p100より引用
重松清が得意とする、どん底まで落としても希望を持たせる終わり方は、「満足」以外のなにものでもありません。そして、346ページというボリューム感。中学生が大人と同等の読書ができる、と判断されたといってもいいでしょう。子どもの扉と大人の扉を行ったり来たりしている中学生に、ぜひ読んでほしいものです。
『小学五年生』
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