7つの顔をもつ男——トッド・ラングレンの全貌にせまる(70年代編)

2015年フジロックでDJの繰り出すサウンドをバックに、2人の萌えダンサーを従えて踊り狂った、67歳のロック界の御大トッド・ラングレン。次に出た椎名林檎から「ご覧になりました? トッド・ラングレン……」というMCを引き出すほど話題になりましたが、彼の長過ぎるキャリアを時代別にかいつまんでご紹介します。

70年代

トッドは1967年に「ナッズ」というバンドでデビューしますが、69年にナッズを脱退してソロになります。

ナッズのデビュー・シングル「Open My Eyes」です。明らかにビーチ・ボーイズの影響を受けたコーラスが魅力的なパワー・ポップですね。

サムシング/エニシング?(ハロー・イッツ・ミー)

トッドの3rdアルバムにして代表作ともいえる2枚組の作品です。サイド1〜3で、すべての楽器、ヴォーカルをトッドが一人でやっていて、所謂「宅録」のはしりを実践しています。逆にサイド4では、ミュージシャンを集めて一発録りするという、一つの作品で正反対のことにトライしているのです。「I Saw The Light」「Hello It's Me」などのヒット曲も収録されています。

「Hello It's Me」はナッズ時代にすでに存在した曲の再録音なのですが、こちらのヴァージョンの方が断然良いです。

魔法使いは真実のスター

ポップ・スターであるトッドとしてはかなり実験的なアルバムです。ジャケットに描かれている絵のように、おもちゃ箱をひっくり返したような混乱と狂乱を聴くことができます。

2009年に行われた「魔法使いは真実のスター」再現ツアーの模様です。

誓いの明日

このアルバムは前半(サイド1)はヤードバーズ、ビーチボーイズ、ビートルズ、ボブ・ディラン、ジミ・ヘンドリックスのカバー、後半(サイド2)はオリジナル曲という構成になっています。カバー曲はトッドのルーツを知る上でも興味深いですが、アルバムの原題"Faithful"(忠実な)の通りに、ほとんど完コピと云ってもいいほどオリジナルそのまんまです。

"Love Of The Common Man"は爽やかな名曲です。

ミンク・ホロウの世捨て人

ミンク・ホロウとはトッドのプライベート・スタジオであるユートピア・サウンド・スタジオがある通りの名前です。通算8枚目に当たるこのアルバムでもトッドが全ての楽器をプレイしており、"Can We Still Be Friends"など名作揃いです。

間奏で変拍子が用いられた複雑なコーラスが美しいバラードです。ロバート・パーマーなどがカバーしています。

まとめ

70年代のトッドはポップ・スターとしてのキャリアを確立した時期ですが、一方で前衛的な実験やユートピアというプログレ・バンドとしての試みも重ねていたのです。また、一人ですべての楽器を演奏するという宅録スタイルは、この後ますます強調されてきます。

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