無能の鷹(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『無能の鷹』とは講談社の女性漫画誌『Kiss』で連載されているお仕事コメディ漫画。作者ははんざき朝未。舞台はとあるITコンサル会社。主人公は見た目は「デキる人」だけど、無能な鷹野ツメ子。ひよわそうだけど有能な鶸田を始めとした個性豊かな同僚・営業先の人々が登場する。鷹野と彼らの掛け合いが誤解を招きながら、予想の斜め上に進んでいく。無能なのにどこまでもポジティブな鷹野の強烈なキャラクターがこの作品の魅力である。宝島社「このマンガがすごい!2021」オンナ編第11位にランクインした。

鷹野ツメ子「会社に必要とされてるかは考えないようにしてる」

鷹野の無能さをどうにもできず、部長が最終的には解雇するしかないとぼやいている時、ドアの外に鷹野が通りがかったのを鶸田が見つける。そんな鷹野を鶸田が追いかけるが、鷹野は部長の言葉を全く気にしていない様子。鶸田が気にならないのか尋ねたところ、鷹野は「私が会社を必要としてるから」「会社に必要とされてるかは考えないようにしてる」と答えた。鷹野のメンタルの強さ、自己肯定感が非常に高いことが明らかになった場面であった。

鶸田「そんな仕事キッザニアにもねぇよ」

休憩中に鷹野と鶸田が話している場面。無能故に社内にしかいられない鷹野だが、外回りをしてみたいと話す。ただ、難しいことを考えるのが苦手な鷹野は、もし外回り中に電話がかかってきたら「1+1は?」という問いに「…2です!」と答える程度のものが良いと言う。そんな鷹野へ鶸田は「そんな仕事キッザニアにもねぇよ」とツッコミを放つ。小学生でもできるぞという意味ではあるが、キッザニアという施設名をあげるところが、鶸田を通して作者のセンスが感じられる。

鳩山「こいつ外車のこと『あぁ外出用の車ですよね』って言ってたんだぞ」

初めて鶸田が鷹野を連れて営業先へ向かう前に、鳩山が鶸田に「こいつ外車のこと『あぁ外出用の車ですよね』って言ってたんだぞ」と言う。外車も知らないほど常識が偏っている鷹野を営業先に連れて行かない方が良いと、鳩山は心配してくれているのだ。鶸田も逆に外出用じゃない車ってなんだよと心の中でツッコミを入れている。ちなみに鷹野は今更そんな前の話を持ち出さないでと言うが、実際にはつい一昨日のできごとなのだ。鷹野は時間の感覚もズレていることがわかる場面である。

鷹野ツメ子「大丈夫ですよ!今日は有休なので!」

雉谷が鷹野を気遣い、残業代がついてしまうから早く帰るように促す。そこで鷹野は「大丈夫ですよ!今日は有休なので!」と言った。鷹野は自分が有休を取ったことを忘れて会社に来ていた。有休を忘れるぐらい無能なのだが、出勤に変更していいかどうかと言われると、仕事をしてないのに取り消すこともできない。雉谷はそう言いかけて、有休でないときも鷹野は仕事をしていないことに気づく。会社にいれば仕事をしなくても出勤になる鷹野レベルまではなれないと気づく雉谷であった。そんな雉谷は、自分が有休を使ってセミナーに行こうと思っていたことがバカバカしくなり、外回りの時間をごまかして行けばいいと思い直す。そして有休はどこか遠くへ行こうと考えるのであった。

『無能の鷹』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

作者が『無能の鷹』を描こうと思ったきっかけは仕事偏重の世の中に対する怒り

作者が『無能の鷹』を描こうと思ったきっかけの一つとして、自分が無職の時に「仕事をしてるのがそんなに偉いのか」と怒りを感じたことを挙げている。AIブームで「AIに仕事を奪われたら、人間の存在価値はどうなるんだ」なんてことを言ってしまう世間が、今の社会が仕事に重きを置きすぎているのではないかと思ったのだ。思い切ってみんなで無能になってしまえば、価値観が変わり、仕事ができるかどうかを誰も気にしなくなるのではないかと考えた。そういった意味では、鷹野は時代の先駆者であると作者は言う。作者自身も鷹野の図太さ・開き直りっぷりには憧れを持っている。鷹野は「他人に認められたい」とは思っておらず、自分の価値についても考えない。仕事で自分の存在価値を示したり、自己承認を得たりしようとせず、そもそもそんな必要すらない人物なのである。

作者が似ているキャラクターは鶸田

作者のはんざき朝未は、自身が登場人物の中で鶸田に一番似ていると話している。鶸田は仕事の中に自分の存在価値を求めていて、うまくいかずにウジウジと悩むことも多い。作者自身も自己肯定感が低く悩むことが多いので似ていると言う。ただ、鶸田だけでなく、どの登場人物にも自分の一部が反映されているとも話している。たまに鷹野のようにヤケクソになることもあるとのことだ。人も社会もいろいろな人がいるからバランスが取れているというのが作者の考えである。

当初イケメンキャラになる予定だった鶸田

一番最初のキャラクター構想時に、作者は鶸田のことを「儚げで頼りなさげな美少年風」にするつもりだった。作者曰く「70年代の少女漫画に出てきそうな天パのM字バングで髪がシャラランッみたいな」美少年だったそうだ。鶸田をそのような美少年にした理由は、仕事ができそうかどうかと美醜とは無関係で、鶸田が美しくてもなんの問題もないと考えたからである。作者の画力や話の雰囲気の問題により、現在の鶸田に方向転換することとなった。7巻の巻末で作者自身が書いている。

madrok9
madrok9
@madrok9

目次 - Contents