レッド(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『レッド』とは、講談社の漫画雑誌『イブニング』で2006年より連載された山本直樹の漫画作品。1969年から1972年にかけて日本で起こった、革命を夢見た若者たちを描いた青春群像劇。2006年から2013年にかけては『レッド』、2014年から2016年にかけては『レッド 最後の60日 そしてあさま山荘へ』、2017年から2018年にかけては『レッド最終章 あさま山荘の10日間』というタイトルで連載された。

赤色連盟

関西を中心に活動する新左翼党派でモデルは「共産主義者同盟赤軍派」。
「大阪戦争」、「東京戦争」など先鋭的な闘争を主張するものの、作中でも主だった活動は無く「言う事だけはデカイ」と揶揄されている。
1969年のメンバー大量逮捕、1970年のリーダー石鎚逮捕、「国際根拠地論」による主力メンバーの国外逃亡などにより組織は壊滅的状況だったが、革命者連盟との同盟により赤色軍リーダー北が「赤色連盟」の実権を握ることになった。

銃砲店襲撃事件

革命者連盟は獄中のリーダー筑波奪還のため赤色軍に銃の調達を打診するも叶わず、自ら安達、吾妻ら6人のチームを編成し銃砲店を襲撃。散弾銃10丁、空砲1丁、散弾数百発を奪取するも、計画に無かった逃走経路を選択したため実行犯の和歌山、火打ちが逮捕された。
革命者連盟はこの一件により武器を得たことにより、赤色軍との同盟にも成功。
後にこの時入手した銃があさま山荘の籠城戦で使用され、尊い命を奪うことになる。

G作戦決行

「ギャング作戦=通称“G作戦”」。赤色軍が活動資金調達のために銀行や郵便局をターゲットに行っていた強盗行為。
作中では1971年、岩木ら3人が「相互銀行」を狙ってG作戦を決行。およそ112万円を強奪し、その活動資金とした。
しかし、犯行時に誤って青森の資金援助者(通称シンパ)の電話番号が書かれたメモを現場に落としてしまう。この失態により次のターゲットにしていた青森でのG作戦は中止に追い込まれてしまった。

『レッド』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

天城「とにかく生きたい…死にたくない…」

リーダー北に総括を迫られ、必死で「生きたい…死にたくない…」と懇願する天城

山岳ベースの女性メンバーだった天城は、ロングヘアーが特徴的な美人だった。モデルは遠藤美枝子。
しかし、山生活で「総括」という悪しき習慣が勢いを増し、髪や指輪など身なりをいつまでも気にしていたことを周囲に激しく糾弾され総括を要求される。
「総括=死」であったことから天城はメンバーに「とにかく生きたい…死にたくない…」と泣いて懇願。その日に総括のすえ亡くなった“薬師の死体を自らの手で埋めることで、自身の過ちに気付き総括する”という条件が与えられた。
周囲が見守る中、必死で死体を運び言われるがまま死体の顔を殴りつけ埋葬までをやり遂げたものの、リーダー北を納得させられる総括ができていなかったとなり認められなかった。
それまでは「総括の援助」として、自身一人で正しく総括できないメンバーのために“共産主義者になる助け”としていたメンバーが殴ると言う手助けをしていた。
天城は恐怖のあまり「自分で絶対総括をやりきります!」と宣言するが、北から下された命令は「自分で自分を殴れ」というものだった。
もはや命令を拒否することはできず、メンバーの前で自分自身の腹や顔面を何度も何度も殴りつけ、北が「もうやめろ」と声をかけたころには、誰か分からないほどに顔面は腫れ上がっていた。
そこまでしても総括が完了したとは見なされず、容姿を気にしないための手助けとしてショートヘアにした髪をさらに短髪に切られたうえ柱に括りつけられた。
さらに、これまでの異性経験を告白させられた挙句、「ハレンチだ!」と罵倒され、殴られたすえに死亡。
“赦し”の無い自己反省「総括」。これを使い恐怖によって組織での権力に執着した北。
結局、逮捕後に北は獄中で自殺という最後を遂げており、彼自身も結局「総括」はできなかったことになる。

『レッド』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

登場人物の頭部にマークされた数字は亡くなる順番

15名の登場人物の頭部にそれぞれ1~15の数字がマークされている。

単行本第1巻の表紙および作中にたびたび出てくる頭部の数字。正確には1~15までが描かれているのだが、これは登場人物が作中で亡くなっていく順番であり、本作では物語冒頭から「逮捕まであと○○日」、「死刑確定まであと○○日」、「射殺されるまであと○○日」など、悲劇的な結末が待ち受けていることが常に強調されて描かれている。
単行本第1巻表紙で1が付いている赤石は、第四話「1970年11~12月 一人目の死者」で交番を襲撃する実行犯だったが、犯行時に警官に至近距離から2発の発砲を受け、出血多少で死亡。
2人目はメガネをかけた女性「空木」。活動歴は浅かったが赤城に認められて山岳ベース入りを許可されたが、山での生活に馴染めなかったことと医者の彼氏の会いたいという理由からベースから脱走。
メンバーによって阻止され脱走は失敗に終わったものの、彼女の行動が組織を危険に晒すことを案じ、後日泥酔させたところを安達たちの手によって絞殺処刑された。
作中で描かれている事実に基づいた一連の事件の「核」は、何と言っても「何故、志を持った多くの若者が狂ってしまったのか?」ということである。
革命を掲げ、命すら顧みず権力を嫌い、権力に立ち向かっていたはずの若者たちは、「共産主義化」の名のもとに多くの仲間を自身の手にかけ殺害。
わずか20名ほどの小さな組織での権力を握るために「総括」という名の救いのないリンチ・拷問を敢行し、総括させられた仲間は全員死亡。死亡したメンバーについては「共産主義者になれなかったための敗北死」と断罪され、自身らに罪の意識を感じないもの。自らが標的になることを恐れて自責の念にかられながらも犯行に加担し続けた者など様々な想いが作中では描かれている。
「人は権力を得るとここまで変われるものなのか。それとも、権力が人を変えてしまうのか」ということを読者に問いかけている。

2つの組織が「赤色連盟」となってからは、本質はひたすら「権力抗争」と「権力に取り憑かれた人間の本質」について描かれており、等しく犯罪者である彼らには小さいコマでも死亡する順番に番号が振られている。

「こういう思想を持ってこんな事をしている人は、こんな最期が待っています」という事実がベースになっている物語だからこそ取れる手法でもあるが、ストーリーは決まっている。ならば「どういう見せ方をしていくか」と考えた時に、この手法は革命的であり、もちろん他作品でも今までになかった手法となる。
明確な主役が無く群像劇である本作がゆえ、作中で常に登場人物の「最後」を公開することにより、普段なら物語の「先」や「続き」に気持ちがいってしまうところを、「今」を主役にすることができている。

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@sana27277

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