ブルバスター(BULLBUSTER)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ブルバスター』とは、ロボット兵器を運用する会社の苦難と奮闘を描いた、中尾浩之原作、海老原誠二執筆によるライトノベル作品。経済的な視点からロボット兵器を描いたユニークな作風で知られる。2023年にはアニメ化された。
火山性の有毒ガスと共に現れた巨大生物により、住民が島の外へと追いやられた龍眼島。龍眼島奪還のために設立された波止工業株式会社に入社した沖野鉄郎は、弾丸の1発から燃料代、保険料、果ては人件費まで、様々な“コストの壁”が立ちはだかる中、ロボットの操縦者として活躍する。

『ブルバスター』の概要

『ブルバスター』とは、ロボット兵器を運用する会社の苦難と奮闘を描いた、中尾浩之原作、海老原誠二執筆によるライトノベル作品。
小説投稿サイト『カクヨム』で連載された作品で、経済的な視点からロボット兵器を描いたユニークな作風で知られる。物語の舞台となっている九州での人気が特に高く、「北九州ポップカルチャーフェスティバル2018」では本作のヒロインがイメージキャラクターを務めた。2023年にはアニメ化を果たす。

火山性の有毒ガスと共に現れた謎の巨大生物「巨獣」により、住民が島の外へと追いやられた龍眼島。龍眼島奪還のために設立された波止工業株式会社(なみどめこうぎょうかぶしきがいしゃ)に入社した沖野鉄郎(おきの てつろう)は、ロボット開発者とその操縦者という立場で活躍しようと意気込むが、そんな彼の前に様々な“コストの壁”が立ちはだかる。
弾丸の1発から賃料、燃料代、保険料、果ては人件費。巨獣と戦う前に次々と襲い来る経済的な問題に悩み、心折れ、同僚たちと力を合わせてこれを乗り越えつつ、鉄郎は龍眼島奪還のために力を尽くしていく。

『ブルバスター』のあらすじ・ストーリー

新入社員の初陣

火山性の有毒ガスと共に現れた謎の巨大生物「巨獣」により、住民が島の外へと追いやられた龍眼島。龍眼島奪還のために設立された波止工業株式会社(なみどめこうぎょうかぶしきがいしゃ)に、蟹江技研でロボット開発に携わっていた沖野鉄郎(おきの てつろう)が入社する。鉄郎は自ら開発した2足型ロボット兵器ブルバスターで華々しく活躍することを夢見ており、その空回り気味のやる気と熱意は波止工業の社長である田島鋼二(たじま こうじ)、社員の白金みゆき(しろがね みゆき)や武藤銀之助(むとう ぎんのすけ)に困惑と止めに受け止められる。
そんな時、龍眼島に巨獣が出現。これまで波止工業で主力として活躍していたロボット兵器ブルローパーは戦闘中の故障で島内に打ち捨てられた状態にあり、鉄郎はぶっつけ本番で実戦を経験することとなる。出撃直前で監査役の片岡金太郎(かたおか きんたろう)に「各種契約が終わってからにしろ」と止められこそしたものの、鉄郎は武藤らと共に龍眼島に上陸。初めての実践に恐怖し戸惑いながらも巨獣を撃破する。これが自分の作ったブルバスターの力だとばかり快哉を上げる鉄郎だったが、そんな彼を武藤と並んでブルローパーのパイロットを務める二階堂アル美(にかいどう あるみ)が胡乱な眼差しで見詰めていた。

波止工業はもともとは建設会社だったが、巨獣の出現で住民が追い出されて以来、龍眼島の奪還を目指してその最寄りの島に社屋を移転していた。ところがこれが地元の建設会社から警戒される結果となってしまい、彼らの根回しで輸送手段を失い営業困難な状況に追い込まれてしまう。
現在の波止工業が害獣駆除を専門としていることをアピールするため社員一同が奔走し、鉄郎が紹介した企業の協力で宣伝と会社の新規ロゴの発表が行われる。しかし宣伝用の写真を撮影する際、アル美は“自分の作ったブルバスター”を誇る鉄郎に「私たちがやっているのはゲームじゃない」との辛辣な言葉を言い放つ。鉄郎はこれに面食らうも、武藤から巨獣の人的被害について教えられたこともあり、「確かに自分は浮かれていたのかもしれない」と反省。アル美はアル美で、撮影の場で怒りを爆発させたことに彼女なりの謝罪の意を示し、2人はとりあえずの和解を果たすのだった。

波止工業の危機

巨獣の存在は世間には秘匿されていた。これは巨獣の駆逐後に島民たちが一刻も早く龍眼島に戻れるようにするためで、自衛隊ではなく波止工業のような民間企業が駆除を請け負っているのもそのためだった。ところがある日、沖野がうっかり巨獣の動画データを流出させてしまい、大きな騒ぎとなる。
「動画はフェイクのものだった」と拡散することで火消しを行い、田島や片岡が方々に頭を下げて対応し、どうにか事態は沈静化。打ちひしがれた沖野は「迷惑をかけた、もう会社にはいられない」と退職願を用意するも、武藤から「お前が“ロボットが好き”と言っていたのはその程度だったのか」と一喝されてその提出を保留する。

その頃、龍眼島には新たな巨獣が現れていた。海も荒れてブルローダーを送り込めない中、相手が小型タイプであることから「生身でも十分倒せる」と判断したアル美が銃を手に単身島へと向かう。そこで廃墟と化した自身の生家を見て感慨に更ける彼女の前に、問題の巨獣が姿を見せる。なんとか撤退するアル美だったが、この時彼女は「この小型の巨獣は、自分の家で飼育していた犬のシロと身体的特徴が一致する」ことに気付く。
小型の巨獣は首輪らしきものを備えており、アル美の予想は正しかったことが判明。「巨獣発生のプロセスが分かるかもしれない」と考えた波止工業一同は、これを生け捕りにしようと考える。資金面の問題から難色を示した片岡も捕獲自体には賛成し、宣伝と新規ホームページを見て協力を申し出た企業の提供で新たな船も確保。作戦中に動画配信者が島に無断上陸、想定に無い巨獣の出現といったトラブルを乗り越え、沖野たちは無事に小型の巨獣ことシロの成れの果ての捕獲に成功する。

波乱の新戦力

巨獣の生け捕りには成功したものの、その解析を請け負うシオタバイオの反応は鈍く、「巨獣がなんらかの哺乳類が変異したものである」ことだけ突き止めて調査を放棄。「系列グループのよしみで協力してやっているが、金にならないことにこれ以上力は貸せない」と言い切る彼らに沖野は怒りを覚えるが、水原渚(みずはら なぎさ)という研究員だけは巨獣の潜在的な危険性を理解し、会社の規則を破って協力を申し出る。彼女の提案で各種センサーを仕込んだ実験用マウスを巨獣の発生源と思われる池の近くで放つこととなるも、どういうわけか池の周囲までもが湿地と化しており、ブルバスターで作業していた沖野は危うく沼の中に沈みそうになる。
どうにか作業を終えて会社に戻った沖野を待っていたのは、武藤が負傷中のマンパワーの補充を兼ねて系列グループの塩田化学から招いた鉛修一(なまり しゅういち)という新入社員だった。鉛はエリートではあったが、規律第一で融通が利かず、正論を並べて他人を従わせようとする難のある若者だった。波止工業に送られてきたのも事実上の厄介払いで、鉛が大卒だと聞いて反感を抱いていた沖野は彼と派手な口論を繰り広げる。

一方、龍眼島に放ったネズミは、水原の予想通りに巨獣化。捕獲には失敗するも、湖の中に落ちたところまでは足取りが判明し、沖野たちは「湖の奥を調べるため、水中調査用のロボットを探そう」と盛り上がる。波止公共の経営状況ではそのための費用を捻出することができず、社員一同頭を抱えるが、「巨獣の存在を世間に公表し、クラウドファンディングで資金提供を募る」という鉛のアイデアでこの問題の解決を図ることとなった。
そんな中、かつてシロだった巨獣が研究所の外に逃げ出すという事件が発生。鉛が襲われかけるも、アル美が変わり果てた愛犬を射殺して事無きを得る。この一件は鉛の心境にも相応の変化を与え、彼は「水中で活動できないブルバスターの改造」を沖野に提案した上で、「自分にもブルバスターの操縦方法を教えてほしい」と訴えるのだった。

融資の誘い

波止工業に融資の話が舞い込む。龍眼島にある海水処理プラントの稼働データを欲した塩田化学が、自身の下部会社となることを条件に活動資金を融通してくれるというのだ。波止工業の名前自体は無くなる可能性が高いものの、「龍眼島奪還こそ自分たちの目的」と田島はこの話を前向きに受け入れる。沖野たちは「これで今まで以上に巨獣駆除に力を入れられる」と喜ぶが、この融資には裏があった。
水原によると、巨獣の発生原因は“塩田化学が遺伝子改良した発電バクテリア”だというのだ。これは通常なら無害なものだったが、龍眼島の湖の固有種である特殊な珊瑚が分泌する粘膜と合わさることで、残留するナノマシンの誤作動によって生物の遺伝子を狂わせて巨獣化させる力を持っていた。塩田はこの事実を隠蔽するために、真実に近づいている波止工業を傘下に収めて口封じしようとしていたのである。

新たに設けられた年齢制限によって武藤は波止工業を追い出され、沖野は鉛を「塩田化学のスパイ」と決めつけて決定的に仲違いし、アル美は「事実を隠蔽することに加担するなら会社を辞める」と宣言。次々と噴出する問題の中、田島は「この件は自分に預からせてほしい」と言ってとりあえず場を収める。
会社のため、社員のため、龍眼島の住民たちのため、どうするのがベストなのか悩んだ末に、田島は塩田化学に反旗を翻し、巨獣の存在とその発生原因について公にする決意を固める。しかし彼がこれを行動に移すより早く、同じ結論に達した沖野、アル美、武藤、白金が島内の様子を映した動画をネットに投稿。沖野は鉛から「自分はスパイではない」と明言された上で、巨獣の駆除のためには長期継続的な収入が不可欠とのアドバイスを受け、塩田化学の参加になるのではなく波止工業が独自に事業を続けられるようネット配信という手段を思いついたのだった。田島は「自分が先にやるべきだった」と言って沖野たちの独断を許し、塩田化学と手を切ることを宣言する。

反撃の狼煙

波止工業が巨獣の存在を世に明かそうとしていることを察した塩田化学は、情報操作を行って彼らの動きを封じつつ、龍眼島奪回のための独自のプロジェクトを発表。彼らは巨獣の神経細胞の中に、最近注目されているニューロ粒子と呼ばれる物質が含まれていることを知り、龍眼島を「巨獣の培養場」として独占しようとしていた。
塩田化学を敵に回し、活動資金を得る術を断たれた波止工業だったが、公開した動画を見て手を貸そうという者が現れる。株式会社タカラダ健康の社長である宝田寅正(たからだ とらまさ)という男が事務所に来訪し、「新薬の材料になりうる龍眼湖の珊瑚を確保したい、そのために波止工業と手を組みたい」と出資を申し出てきたのだ。宝田は「塩田化学に対抗するために、龍眼湖の漁業権を島民から買収し、自分たち以外の者が手出しできないようにする」との策を提案し、田島たちはこれを採用する。

一方、「龍眼島と島民たちのためにできるベストは何か」を模索し続けた鉛は、巨獣を利用した金儲けしか考えていない塩田化学に見切りをつけて辞表を提出。再び波止工業の面々と行動を共にする。塩田化学の新プロジェクトが始動する明後日の0時までの間に、彼らの悪行を暴く決定的な証拠を手に入れるための、波止工業の大一番が始まろうとしていた。

中小企業の意地

塩田化学の目的は、龍眼島を合法的に手に入れた上で、「自社工場の産業廃棄物が巨獣を生み出した」事実の隠蔽と、「巨獣の増産によるニューロ粒子の安定確保」にあった。龍眼島の所有権が塩田化学に移る前日、彼らの犯罪の証拠を手に入れるべく、波止工業の全社員と島民の有志が島に乗り込む。
波止工業の社員たちはそれぞれに奮闘し、巨獣の発生源である龍眼湖の珊瑚や工業廃水の調査を進めていく。その最中にかつてない超大型の巨獣が現れ、一行は「撤退やむなし」というところまで追い詰められるが、そうはさせじと沖野が奮起。「ここでならなかったらいつヒーローになるんだ」と大立ち回りを繰り広げ、超大型巨獣を撃破する。

首尾よく「巨獣の発生は塩田化学による公害が原因」との証拠を手に入れた沖野たちは、これを使って世論を動かし、その悪行は白日の下にさらされる。これで龍眼島の復興も大きく進むと沖野たちが期待に燃える一方、田島は1人空港に赴いていた。
巨獣とそこから得られるニューロ粒子に目を付けた者は塩田化学だけではなく、海外の企業までもが食指を伸ばしていた。塩田化学が集めたデータとニューロ粒子のサンプルが今まさに持ち出されようとしている場に現れた田島は、一般人である自分にそれを止める力は無いと歯噛みしつつ、「中小企業を甘く見るな」と龍眼島のために断固戦い続ける旨を宣言する。巨獣、経費、そして巨大企業を相手にした波止工業の戦いの日々は、まだまだ終わらない。

『ブルバスター』の登場人物・キャラクター

沖野鉄郎(おきの てつろう)

CV:千葉翔也

蟹江技研から波止工業株式会社に出向してきた21歳の青年。波止工業株式会社ではブルバスターのパイロットを務める。

二階堂アル美(にかいどう あるみ)

CV:瀬戸麻沙美

波止工業株式会社の社員。23歳。鉄郎と並んでブルバスターのパイロットを務める。

田島鋼二(たじま こうじ)

CV:三木眞一郎

波止工業の代表取締役社長。45歳。私生活はだらしないが、仕事人としては非常に有能。

白金みゆき(しろがね みゆき)

CV:高田憂希

波止工業の総務・庶務を務める女性。29歳。

YAMAKUZIRA
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@YAMAKUZIRA

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