インモラルな手塚治虫作品

なかなかに暗い作品を執筆することで有名な手塚治虫。そんな彼が描く、読んだら最後と言わんばかりに引き込まれてしまう作品を3つ紹介します。

奇子

時は戦後、GHQのスパイを行っていた天外仁朗(てんげじろう)は、組織にとっての邪魔者である共産主義者の男の殺害事件に関与してしまう。証拠隠滅のために血のついたシャツを洗っていた仁朗。そんな彼の姿を目撃したのは、まだ幼い腹違いの妹・奇子(あやこ)だった…

無邪気で物の道理のわからない奇子は、やがて目撃した事実を抹消するために大人たちによって地下の土蔵に閉じ込められ、世間に触れぬよう育てられることとなる…

世間から隔絶された奇子が放つ、妙齢の女性にしては不気味な無邪気さと浮世離れしているがゆえの透明感。表裏一体のこの魅力に惹き込まれること間違いなしです。

MW

凶悪殺人を重ねるエリート銀行マン・結城美知夫と、懺悔しに教会へ来る彼をかばい続ける神父の賀来巌。
罪の秘密を共有し肉体関係を重ねる彼らは、かつて国が引き起こした大虐殺事件の生き残りでもあった…

毒ガスによって身体と思考を蝕まれた結城と、彼への救済だけを胸に時には殺人すら手伝う賀来。ただれていながらもある種の純愛にすら思える関係に「さすが漫画の神様…!」と思わずうなってしまいます。

アラバスター

黒い肌を悩みの種とし皮膚を透明にした男と、マッド・サイエンティストな祖父によって透明の皮膚を持って生まれた少女。
世間に裏切られ嘲笑われた彼らは、やがて憎しみを引き金に世界を揺るがすようになる…

心の汚い美青年や純情に身を捧げるヤンキーなど、なかなかに味わい深い登場人物が多い作品。読んでいると「美しさって何なのか…?」と思わず問いかけたくなります。

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