saki14h3@saki14h3

saki14h3
saki14h3
@saki14h3
0 Articles
2 Reviews
0 Contributions
0 Likes
saki14h3

saki14h3のレビュー・評価・感想

メッセージ / Arrival
10

対話が生み出す生きることの答え

2017年公開のSFミステリー映画。
突如世界中に現れた宇宙船。搭乗する知的生命体の目的を聞き出すため、言語学者のルイーズが彼らとの対話に挑む物語が展開されていきます。

人間の業を、深く、繊細に描くことに定評のあるドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作。
壮大なスケールのSF作品になっていつつ、ゆったりと静かに進んでいく展開は、今作のテーマの1つとなっている"傷を癒す対話"のようにも感じられます。
知的生命体"ヘプタポッド"が扱う未知の言語や、作中で流れるモールス信号のような音楽など、ビジュアルやサウンドの両面で"対話"を表現しているのも注目したいポイント。

そうして描かれていく物語の結末は、あまりにも美しく衝撃的です。
見る人によっては美しく感じ、また、見る人によってはショックを受ける人もいるでしょう。
賛否の分かれるラストだと言えます。

それでも私が本作を素晴らしいと思う理由は、結末を見て感じたどの感情も、私たち人間でなければ感じ得ないものだというメッセージを体現している作品だからです。
この作品の終盤で明かされるある仕掛けは、私たち人類が言語を"話す"ことで理解できる生き物だということ、そしてそれによって"人生"が形成されていることを仄めかしてます。

生きることは、流れる時間の中で様々な感情に直面することだと言ってもいいでしょう。
正の感情、負の感情をどうとらえるか、その問いに1つの答えを出しているのが本作『メッセージ』だと感じます。時間のある方は、ぜひ続けて2回見てほしい。きっと、より美しく衝撃的な結末を感じられるでしょう。

銀の匙 Silver Spoon
10

『銀の匙』の魅力

皆さんは、「銀の匙」と聞いただけではただのスプーンを思い浮かべると思います。しかし、この「銀の匙」には「幸福を招く」という意味があるのです。

この漫画の主人公である八軒勇吾は父親から進学校への入学を強く命じられ、日々の勉強に嫌気がさし父親の反対を押し切って、農業高校へと入学します。
そこでは、勉強漬けの日々からは全く考えられないような農業を学ぶ生活が始まったのです。早朝からの家畜の世話や春夏秋冬の野菜の栽培、農業高校ならではの文化祭などのイベントの数々。そんな、日々を過ごす八軒勇吾の高校卒業までの3年間を描いた、八軒勇吾とその仲間たちによる日常の物語です。
この作品はあの『鋼の錬金術師』の作者・荒川弘さんなんです。これだけでも、読んでみようかなと心をくすぐられる人は多いと思います。

『銀の匙』の魅力はやはり、仲間たちと農業高校での生活を通して、描かれる主人公の成長です。
登場する主人公の仲間たちは実家の農家を継ぐ、獣医になりたいなど、自分の目標がしっかりと決まって入学してくる仲間がほとんどでした。
しかし主人公は親の言いなりになりたくないという理由で入学したため、自分の進路がはっきりしている周囲に劣等感や嫉妬を抱いています。そんな主人公が飼育している動物との触れ合いや先生、仲間たちと文化祭などの学校行事を通して成長を重ね、自分のやりたいことを見つけていく姿が、「THE青春」という感じで読んでいてとてもわくわくします。
また思春期ならではの葛藤や思いの表現がとても繊細に表現されていて、読んでいる読者が高校生に戻ったような感覚になる作品です。
高校生のときの青春をもう一度味わいたい方にとてもおすすめできる作品です。