『銀の匙』の魅力
皆さんは、「銀の匙」と聞いただけではただのスプーンを思い浮かべると思います。しかし、この「銀の匙」には「幸福を招く」という意味があるのです。
この漫画の主人公である八軒勇吾は父親から進学校への入学を強く命じられ、日々の勉強に嫌気がさし父親の反対を押し切って、農業高校へと入学します。
そこでは、勉強漬けの日々からは全く考えられないような農業を学ぶ生活が始まったのです。早朝からの家畜の世話や春夏秋冬の野菜の栽培、農業高校ならではの文化祭などのイベントの数々。そんな、日々を過ごす八軒勇吾の高校卒業までの3年間を描いた、八軒勇吾とその仲間たちによる日常の物語です。
この作品はあの『鋼の錬金術師』の作者・荒川弘さんなんです。これだけでも、読んでみようかなと心をくすぐられる人は多いと思います。
『銀の匙』の魅力はやはり、仲間たちと農業高校での生活を通して、描かれる主人公の成長です。
登場する主人公の仲間たちは実家の農家を継ぐ、獣医になりたいなど、自分の目標がしっかりと決まって入学してくる仲間がほとんどでした。
しかし主人公は親の言いなりになりたくないという理由で入学したため、自分の進路がはっきりしている周囲に劣等感や嫉妬を抱いています。そんな主人公が飼育している動物との触れ合いや先生、仲間たちと文化祭などの学校行事を通して成長を重ね、自分のやりたいことを見つけていく姿が、「THE青春」という感じで読んでいてとてもわくわくします。
また思春期ならではの葛藤や思いの表現がとても繊細に表現されていて、読んでいる読者が高校生に戻ったような感覚になる作品です。
高校生のときの青春をもう一度味わいたい方にとてもおすすめできる作品です。