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chelsea_02161のレビュー・評価・感想

ゴブリンスレイヤー / ゴブスレ / Goblin Slayer
10

ファンタジー世界の現実主義者

私がお勧めしたいマンガは、「ゴブリンスレイヤー」です。
ストーリーを簡単に説明すると、ゴブリンの襲撃により故郷と大切な家族(姉)を亡くしてしまった男が、修行を積み、ゴブリン退治のエキスパートになっていく、という話です。
所謂、「ファンタジーもの」であり、作中では魔法(奇跡)やエルフ、ドワーフといったキャラクターが沢山出てきます。

物語の中では、そういったファンタジーものならではの激しくて、スケールの大きいバトル描写が見ものです。
しかし、主人公である「ゴブリンスレイヤー」の戦い方はとても地味です。
というのも、彼自身が20歳代の普通の男性であり、魔法を使うこともできず突出した技能や身体能力を持ち合わせているわけでもありません。

では、何が彼の強さであり、持ち味かというと、経験と探求心からくる「柔軟な思考力」です。
ゴブリンスレイヤーは平素からゴブリン討伐のことを考えており、生活のすべては「ゴブリンをせん滅すること」に注がれています。
よって、装備品や携帯品の一つ一つに不備がないかチェックし、改良できることはないかといった意識を常に持っています。

また、自身の身の程をわきまえているので、やみくもに突っ走るようなこともなく、その場の状況にあわせた最も妥当な戦略を打ち立ててゴブリンを追い詰めていく、という戦い方がとてもかっこいいです。
是非1度読んでほしい作品です。

さよなら絵梨
9

【ネタバレなし】藤本タツキの描くボーイミーツガール短編『さよなら絵梨』映画少年と謎の美少女の出会い

『さよなら絵梨』は『ファイアパンチ』『チェンソーマン』で知られる新進気鋭の若手漫画家・藤本タツキ原作、2022年春に『ジャンプ+』で配信された短編漫画である。配信と同時に話題となり、同年7月には単行本化された。

主人公は高校生の少年、伊藤優太。高校の文化祭で母の病気発覚から最期までの闘病生活を辿っていくドキュメンタリー映画『デッドエクスプロージョンマザー』を制作し、上映する。映画のラストシーンでは優太は母を看取ることができず病院を抜け出し、背景の病院を爆破し上映が終了する。この映画は学校中で批判を浴び、耐えきれなくなった優太は母の死んだ病院の屋上で自殺を図るが、そこには謎の美少女・絵梨がいた。
そこから絵梨と優太は次の文化祭までに「みんなをブチ泣かす」ような作品を作るべく、ある廃墟の一室でひたすら映画を見たり、プロットを練ったり、彼らの復讐とも言える映画制作を始めるのだった。

この漫画を読み終えた最初の感想は、「藤本タツキの描く女性はなぜこんなにも魅力的なんだ……!!」である。
この作品のヒロインである絵梨は、半ば強引に優太に映画を制作させる。毎日朝から晩まで映画を見させては感想を求め、優太が一生懸命作ってきたプロットを何度もボツにする。
しかしその瞳の奥にはなぜか惹かれるような魅力があり、優太と過ごしていくなかで表情が豊かになっていく姿はとても可愛らしく、なかなか懐かない猫がやっと心を開いてくれたような感情になる。
『チェンソーマン』にもたくさん魅力的な女性キャラクターが登場してくるが、藤本タツキの描く女性は高圧的でサディスティックで、それでいて歪んだ愛を抱えている女性が多い。そんな女性がとても魅力的で、登場する男性キャラクターや我々読者は、そんな女性の前でひれ伏すしかなくなってしまう。
こんな魅力的な女性を描けるのは藤本タツキの圧倒的な画力と構成力があるからだろう。

この作品の魅力は絵梨のキャラクターだけでない。絵梨と出会ったことによる優太の成長である。
優太は母の姿をカメラに収めた時のように、絵梨の姿もカメラで追い始める。実は優太が最初に製作した映画『デッドエクスプロージョンマザー』には秘密があった。優太はカメラ越しの絵梨を見て何を思うのか。どんな映画を作るのか。そして絵梨とは一体何者なのか……。

たった一巻の短編なのに1本の映画を見たような読みごたえと満足感が得られる『さよなら絵梨』。ぜひみなさんにも、藤本タツキの世界観を堪能していただきたい。