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9phiki0117のレビュー・評価・感想

村下孝蔵
9

時代を超え、海を越えて評価される、美しい日本語表現でつづられた恋の歌

1980年代を中心に『初恋』『踊り子』など、数々の恋愛ソングを作り上げ、現在、その楽曲の完成度から、没後20年近くたった今も、国内外から高い評価を受けるシンガーソングライター村下孝蔵。
「好きだよと言えずに初恋は」その楽曲のフレーズは、一度は耳にしたことがある人は多いでしょう。
今回は、アーティスト村下孝蔵の活躍を振り返り、その魅力に話したいと思います。

1953年2月28日に熊本県で生を受けた彼は、ピアノの調律師をしながら、自主製作アルバムのレコーディングをする日々を送ります。
1979年に、CBSソニーオーディション最優秀賞を授与。翌80年に、『月あかり』でデビューし、1982年の『ゆうこ』『初恋』という大ヒットを生みだしました。
これを機にコンサート活動を地道に続け、年に一回アルバムを出すというペースで活動を続けていきました。
そんな最中、1999年6月24日に高血圧脳内出血により帰らぬ人となります。
享年46歳。奇しくもこの年、デビュー20周年のタイミングでした。

彼の死後、20数年経過する現在でも、森口博子をはじめ、高橋優など数名のアーティストが『初恋』などを中心に、彼の楽曲がカバーされています。
更には、海外で日本の魅力をピックアップするyoutuberの動画で、彼の楽曲が絶賛するものが散見されるなど、その人気は国内外の隔たりがありません。

彼の楽曲の魅力として、多く語られるのが、歌詞に連ねられた美しい日本語の数々でしょう。
はかない恋模様を歌う彼の詩では、「つま先立ちの恋」や「浅い夢だから 今も離れない」といった恋人たちの心情を巧みな比喩表現用いた言葉並びでつづられ、その切ない恋模様をより深く、ダイレクトに聴者の心に響かせ、想像を働かせます。

それらが、村下氏の高いギター演奏技術と、優しく響くテノールボイスが彩を与えるかのように、音楽として昇華させた楽曲の数々は、時代を超え愛されるようになりました。その人気は海外を始めとした80年代の邦楽ブームも手伝ってか、国の垣根をも超えることとなったのです。

もう終わりにしよう。
7

何が起きたのかわかった時の衝撃

本作の監督・脚本を務めるのは、鬼才チャーリー・カウフマン。彼の名前を知らなくても「マルコヴィッチの穴」や「エターナル・サンシャイン」と言う作品名を聞けば、ピンと来る人も多いと思います。これまでの代表作と同様に、この「もう終わりにしよう。」も、一筋縄ではいかない難解さと、何が起きたのか薄っすら気づいた時の衝撃は、凄まじいものがあります。
お話の始まりは地味なもので、恋人との別れを意識している女性とその恋人(男性)が、二人で男性の実家に車で向かう……というものです。映画の多くの時間が、この悪天候の雪の降る中を、なんとなく気まずい車中で二人が会話する描写に使われています。この会話、よく聞いていると少しおかしなことがわかります。女性が何か別れを意識したことを深く考えようとすると、ちょうどいいタイミングで男性が話しかけて来たり、映画についてあまり知らないはずの女性が、少し経つと急に映画好きな男性と互角なまでの映画評論を始めたり……。
この違和感が、男性の実家を訪れてからも倍増していきます。まるで時間軸が狂ったように、年老いたり若返ったりする男性の両親。女性が書いたはずの詩が男性の部屋に置いてあったり、女性が描いたはずの絵が置かれていたり……。観客はやがて、これが単に別れを決意した恋人同士の話ではないと気づくのですが、その答えがわかるのは、映画の中ではなく、見終わった後だというのが、気持ちよくぞっとできる、面白い映画です。