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2xtechnodoriのレビュー・評価・感想

山崎まさよし
10

現代日本のブルースシンガー

山崎まさよしは、1995年にメジャーデビューしたシンガーソングライターであり、俳優です。
彼のヒット曲はいろいろありますが、なかでも初期の「中華料理」は、平川地一丁目もかつて見事なカヴァーを行っていて、名曲だと思います。この曲はカントリー調でとても調子の良いメロディとリズムに乗せて、女性の友人との距離を詰めようともがく切ない男の気持ちを歌っています。
1980年代くらいまでは、日本の流行歌においては男性が恋愛において優位に立っているものが多かったのですが、90年代以降男女の立場が逆転して女性優位となっていきました。その象徴的な楽曲の一つがこの「中華料理」だと言えるでしょう。
「パンを焼く」という曲も、似たような傾向の詞で書かれています。
山崎まさよしの魅力は、新しいタイプのブルースを日本語で行なった点にあると言えましょう。それは憂歌団や近藤房之助といった方々が、日本語でブルースを歌い出した頃の楽曲とは異なるテイストを持った作品となっているのです。即ち、山崎まさよしは彼らよりポップで泥臭くない方向へ進み出して、突き進んできたと言えます。
さらに山崎まさよしが作った「セロリ」をSMAPがカヴァーして大ヒットしたことも特筆すべきです。この大ヒットも楽曲が優れていたればこその現象だったと思います。今後ともその活躍から目が離せませんね。

MOTHER マザー
8

それでも子は親にあの言葉を言えるのか?

長澤まさみが日本アカデミー賞主演女優賞を受賞、他にも国内の同賞を多数受賞した話題作。

いい意味でも悪い意味でも噂には聞いていたが、これは…と思った。
シングルマザーの秋子はまだ幼い息子・周平を抱えながら、無職。
働きもせず、お金は親族から借金してでも無心。
断られれば声を荒上げて逆ギレ。
金はパチンコなどギャンブルへ。
男も取っ替え引っ替え。
ホストの遼と出会い、家に連れ込み、息子をパシリに。
息子を置いたまま男と旅行に行き、家ではガスや電気が止められてしまった。
ようやく帰って来たと思ったら遼とグルになって留守中親切に息子の面倒見ていた知人を脅迫して金の無心まで。
自堕落、育児放棄、果ては犯罪。
生き方も考え方も一切共感出来ない。

『世界の中心で、愛をさけぶ』で白血球と闘うあのピュアな女の子が、まさかこんな毒親を演じるとは。
しかし、それだけ長澤まさみの演技が凄いという事。
ムカつくくらいのふてぶてしさ。
凄みのある熱演。
これまでの印象を見事に覆した。
役者とは良くも悪くも、外見も内面も含め、自分の全てをさらけ出す。
そう言った意味では、長澤まさみは持てる力を出しきり、間違いなくこの作品は今後のキャリアの代表作になったと言えよう。

コメディばかりじゃなく、阿部サダヲもシリアス作品でだらしない役を演じさせれば抜群の演技力を発揮。
『日日是好日』や『星の子』などの感動作、『まほろ駅前』シリーズや『セトウツミ』などの緩いコメディも手掛けているが、やはり大森立嗣と言ったらヘビーな作風。
本作でもその手腕は遺憾なく発揮されている。

何処までも何処までも、とことん堕ちていく秋子。
遼との間の子の妊娠をきっかけに破局し、家族からも完全絶縁してしまった。
5年が経ち、周平は青年に成長、妹・冬華も産まれたが、変わらぬその日暮らしのまま、ついにはホームレスと成り果ててしまう。
どん底もどん底。
底辺も底辺。
そんなとき、国の生活支援の手が差し伸べられる。
そんな時遼が舞い戻って来て、再び波乱の中へ。
そしてこの母子の末路は、最悪の悲劇に…。

どんなオチを迎えるのか、ほとんど前情報ナシで見たので、衝撃的。
何でも2014年に埼玉県で起きた事件がベースなのだそうだ。
哀しく救われない。
あんまりだ。
このオチを巡って、賛否両論なのもよくわかる。
子供は私のもの。
それでもお母さんが好き。
これは、決して赦されない罪か、歪んだ究極の親子愛か。