イジメの時間

イジメの時間

『イジメの時間』とはくにろうによる漫画作品。いじめを題材にしたヒューマンドラマで、2019年より『マンガボックス』で連載が開始された。主人公、天童歩はごく普通の中学生だが、些細なことがきっかけで同級生の鈴木山真次郎と若保囲孝史から壮絶なイジメを受けることになる。学校の屋上から身を投げ出そうとするほど追い詰められた歩は、ある時復讐を決意する。イジメと闘う主人公の苦悩が描かれた作品。重大な社会問題にもなっている学校でのイジメ問題をリアルに描いており、学校関係者を中心に話題の漫画である。

イジメの時間のレビュー・評価・感想

イジメの時間
9

辛くなるがつい読んでしまう漫画

ある日、不良グループにイジメの標的にされてしまった主人公。
母には心配をかけたくないという思いから主人公はイジメにあっていることを隠してしまいます。私にも子供がいるので親目線で言いますが、このタイミングで抱え込まないで相談して欲しかったですね。

唯一の味方であった親友が不良グループの下っ端から暴行を受け、顔中傷だらけに。主人公は自分のせいだと責任を感じてしまいます。「チクったら殺すぞ」のひとことに怯え、誰にも相談できないままイジメは日を追うごとにエスカレートしていき、ついには自宅にまで押しかけられます。

そこで、幼い頃から兄弟のように暮らしてきたペットの猫を殺されてしまいます。
このシーンは本当に心が痛みました。

ペットが死んだのも自分のせいだと思い込んでしまい、ついには自殺を決意。読んでみたら分かりますが、あそこまで追い込まれたら誰でも自殺を考えてしまうでしょう。

母からの電話で自殺を断念し、このまま死んだら悔しいと思い改め不良グループに復讐をはじめます。
暴力に対し暴力で返すのはよくないのかもしれませんが、あそこまでの仕打ちを受けたのなら自分自身で裁きたくなる気持ちも分かります。

自分ならどうしたか、どうすべきだったか、深く考えさせられる漫画でした。

イジメの時間
8

今までに読んだことがない「イジメ」を題材にした漫画

この漫画の冒頭は「出来ることならもう二度と生まれてきませんように…」と、少年が校舎の屋上から飛び降りるシーンから始まる。そしてその物語はその半年前からスタートする。

この物語は正直に言うと胸をえぐられるような残酷なシーンが連続して出てくる。イジメ側の止められない「イジメの衝動」、そして少しずつイジメが連鎖し、より過激なものになっていく。またいじめられる側のだんだん追い詰められていく、そして自殺を決めるまでの痛々しいまでの心理状況も、読むのを止めたい位に伝わってくる。
4巻までは痛々しいだけの、普通のイジメ漫画。読者はきっと、イジメ側の少年たちに殺意しかわかないだろう。

ここまでで注目するべき点はイジメている少年たちの罪悪感をごまかすための「ルール」の存在だ。このルールがあるから、イジメは彼らの中で正当化され、イジメられる者もそのルールの下で暴力に晒されていくことになる。

しかし、この漫画のすごいところは、その後にある「復讐劇」だ。あまりに酷いイジメの描写に心が折れてしまいそうな人は、5巻から読んでもらいたい。主人公の今までの姿は何だったのかという位の変貌を見ることができ、そしてやられたことを「同じこと」でいじめっ子の少年たちにやり返していく痛快さを味わえるだろう。

これは教育の面からみると問題を投げかける衝撃的な漫画かもしれない。少年たちにあまり読んでもらいたくない作品だと思う。だけど正直な気持ちで言うと、私は今の学生たちにも読んでもらいたい作品だ。このリアルな物語を一つの「教科書」にしてもらいたい。

また、かつて「イジメた側」、「イジメられた側」だった大人たちにもこれを読んでもらって、感想を聞きたい。双方の感想の違いからグロテスクなほどのリアルが見えてくるはずだ。