太陽が見ている(かもしれないから)

太陽が見ている(かもしれないから)のレビュー・評価・感想

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太陽が見ている(かもしれないから)
10

切ない恋と成長を描く いくえみ綾の傑作漫画

『あなたのことはそれほど』や『G線上のあなたと私』などの人気ドラマの原作を手掛けた漫画家、いくえみ綾が2014年より少女漫画誌『Cookie』にて連載していた作品です。コミックスは8巻完結。
母と、母の恋人と暮らす主人公「岬」は、中学時代に仲良くなった「楡」と高校入学とともにシェアハウスを始めます。楡のかつての幼馴染「日帆」と再会したことで3人の関係は少しずつ変化し始め……。
高校生から大人に変わっていく3人の心情を丁寧に描写し、読む人の心を惹きつけます。特に、思春期特有の不満や孤独感がとてもリアルに表現されていて、読むと学生時代にタイムスリップしてしまうはず。複雑な家庭環境に翻弄されつつも、自分に、そして互いに向き合い成長する3人から最後まで目が離せません。
私は連載開始時は中学生でしたが、当時から年齢を重ねた今でも面白さが色あせることはありません。まさに子供から大人まで、広い年代の方が楽しめるところも魅力の1つです。
2部制に分かれている本作ですが、1部では一貫して「片思い」が描かれています。片思い特有の嫉妬や葛藤を抱える主人公の岬、そして日帆に共感すること間違いなし。片思いをしている方にはぜひ読んで、そして泣いてすっきりしてほしい作品です。

太陽が見ている(かもしれないから)
10

人付き合いが苦手で「生きにくい」と感じている人におすすめしたい漫画

いくえみ綾「太陽が見ているかもしれないから」が7月に完結しました!
いくえみさんの作品に出てくる女の子は、決してキラキラした少女漫画の女の子ではなくて、クラスで馴染めなくて転校したりと、とても現実的な中で、がむしゃらに強く生きようとする女の子が多くてとても応援したくなります。
「太陽が見ているかもしれないから」の主人公の岬も、人付き合いが誰よりも苦手で、窮屈な思いをしながら生きています。修学旅行で同じクラスの子が言い合いになって、泣き出して、抱きしめあって慰める、そんな女子らしい女子のやり取りを冷ややかな目で見てしまったり、「制服がないから」という理由で高校を選んだり、自分を取り巻く環境にとにかく馴染めないでいます。そんな岬と同じくクラスから浮いた存在の楡。中学で出会った2人が大人になるまでを描いた作品です。

思春期の不安定な心理描写がとても表現されていて、どんなに苦手なキャラクターも「その気持ちわかる」とついつい感情移入してしまい、嫌いになれないキャラクターばかりです。「好きだから眩しくて近づけない」という気持ちや、「本当に好きな人には相談できない悩みをどうでもいい人に相談してしまう」などと言った人間の弱い部分に共感します。学校で、会社で、同じような思いを抱えている人にぜひ読んでもらいたいです。