感想レビュー
『東京 BABYLON』は、1990 年代に連載開始された CLAMP の代表作の一つです。
2021 年にアニメ化が決定されておりましたが、衣装問題で延期となってしまいました。
『東京 BABYLON』の魅力について、レビューしていきたいと思います。
まず一つとしては、誰も予想できない大どんでん返しのストーリー展開です。
CLAMP 作品では必ず通じていると言っても過言ではありません。
ストーリーは、日本の陰陽師の頂点に立つ皇一族十三代目当主皇昴流と、昴流の双子の姉の北都、暗殺集団『桜塚護』の跡取りで謎の獣医桜塚星史郎。
彼ら三人が東京を舞台に起きる怪奇現象に立ち向かう。
というシンプルなストーリーですが、『桜塚護』の正体、星史郎と昴流の隠された関係、星史郎の真の目的、多くの謎がストーリーの中に散りばめられています。
物語が進むにつれて深まる謎から目が離せません。それが明らかとなる瞬間、誰もが釘付けになるのは間違いありません。
次には、怪奇現象事件に練りこまれた社会問題の背景です。
昴流の元に舞い込む霊的現象を陰陽術で退治する訳ですが、ダイヤル Q2、学校内いじめ、介護問題、ストーリーに絡められた社会問題をありありと描いており、シリアスで濃厚な内容に、思わずのめり込んでしまいます。
そして、キャラクターの魅力も見どころです。主人公の昴流は真面目で心優しい十六歳の少年です。
他人の痛みに対して自分のことのように涙を流す純粋で繊細さがあり、自己犠牲を厭わない優しさの持ち主です。
本来陰陽師は術を使う時に起こる反動「逆凪」を恐れて、動物等に肩代わりしますが、昴流はそれを良しと思っていません。
動物が好きで、将来は動物園の飼育員になる夢があります。
学校には通っていますが、依頼が多く舞い込む為、進級が危ぶまれていました。
そんな昴流を支えているのは、双子の姉の北都です。
大人しい昴流とは正反対で、明るくしっかり者で、いつも派手な衣装を着ています。
昴流と同じマンションに住んでおり、部屋は隣同士ですが、生活能力の低い昴流の為にいつも部屋に上がり込んでいます。
昴流の部屋でクッキーを作ったりする等、料理の腕前は中々です。昴流の服のコーディネートも担当しています。
残念なことに、昴流と共に修行に励んできましたが、使える術はほんの一握りであり、陰陽師として活躍する場面は少ないです。
終盤に、昴流には無く、北都にしか使えない術があると明言しています。
将来の夢は団地妻になること等、お茶目な面がある、魅力ある女性キャラクターです。昴流の心の支えともなっている存在です。
それから一番のキーパーソンと言っても過言ではない、重要人物、桜塚星史郎。
二十五歳の青年で、獣医であると同時に暗殺集団『桜塚護』の跡取りですが、昴流に対して好意を寄せており、直球的なアプローチをかけています(昴流はあまり自覚していませんでしたが)気絶した昴流を介抱したり、昴流に危険が及べば助けに来たり、昴流を庇って右目を失明する等、昴流を大切にしている行動が多々見られますが、昴流のいない所では冷酷無慈悲に術で惨殺するといった二面性を持った人物です。
星史郎がどうして昴流に近づいているのか、その謎もまた、作品の魅力の一つです。
最後に、これはやはりというべきか、なんといっても、画力のクオリティーの高さがあげられます。
細かい部分までの繊細なタッチ。陰陽術を駆使する場面の表現力の高さ。
CLAMP ならではの高い画力が詰め込まれています。
時代を超えても愛される『東京 BABYLON』という作品は、いつの時代でも愛されるには充分な作品です。
この『東京 BABYLON』は、次作、『X』に繋がりますが、単作でも楽しめると思います。