the cabs

the cabsのレビュー・評価・感想

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the cabs
9

マスロックバンド the cabsが与えた衝撃

the cabsはKEYTALKのベースボーカルである首藤義勝氏が以前活動させていたバンドである。(2013年解散)the cabsはマスロックの特徴である変拍子を多く取り入れ、暴れるようなギターとシャウト・ベース、爆撃機のように手数の多いドラムが混ざり合い、作品となっている。彼らの作る作品はリスナーに大きな衝撃を与える。彼らの楽曲である「キェルツェの螺旋」を例に挙げると、初見では拍子をとれないイントロから始まり、甲高いライドカップの連打やツーバス連打などリスナーに対して畳みかけるようなフレーズの応酬で、最後はそれを断ち切るかのように曲が終わる。2分足らずのこの楽曲は、その畳みかけるようなフレーズで視聴時間の錯覚を覚えさせる。また、そのような激しい楽器演奏とは裏腹にベースボーカル首藤義勝の透き通るようなボーカルラインがこのthe cabsというバンドを唯一無二の存在たらしめている。さらに、「anschluss」という楽曲ではそのボーカルラインが前面に押し出されている。彼らはここから躍進するに違いないと誰もが考えたその瞬間突然の解散宣言がなされた。リスナーに衝撃を与え続けたthe cabsは日本で唯一無二の存在である。

the cabs
8

歌詞に注目して欲しいバンド

2007年頃、下北沢のとあるイベントでThe Cabsのライブを初めて見ました、当時はまだ高校生で、もちろん残響recordsからアルバムを出す前の事です。バンドのブレインである高橋國光さんがステージ上でギター片手にのたうち回り、最後はペグをおもむろに回してチューニングをもぐちゃぐちゃにして弦が吹っ飛ぶほどの激しいステージパフォーマンスで、その場にいた観客を終始圧倒していました。

それから数年後、残響recordsからデビューが決まったと聞いて、「やはり来たか」という感じでした。You Tubeに上がっている「キェルツェの螺旋」や「二月の兵隊」など、演奏技術が格段にパワーアップしています。
このバンドは、変拍子を多用した楽曲構成、中村一太さんのマシンガンのようなドラム、そこにギター・ベースの弦楽器隊も加わって3ピースバンドとは思えない程複雑で巧妙なサウンドを展開しています。
とにかく演奏技術の高い3人が集まっており、技術面に注目する方も多いのですが、このバンドの最大の魅力は高橋國光さんによる「歌詞」にあると考えます。
高橋さんは、おそらく良い意味で繊細であり独特な感受性の持ち主なのでしょう。
「シベリアの墓標に刻まれた君の名前」「アルコールランプの火に名前をつける そうして遊んでいたかった この体温で暮らすために」などといった歌詞は、誰にでも書けるものでないことは明白です。楽曲一つ一つから、高橋さんの心象風景が見えてくるようです。

激しい演奏と高橋さんの繊細な世界との対比が実に絶妙で、味わい深いバンドといえるでしょう。